医薬品の製造。ステップ 5:非臨床安全性試験

Last update: 16 10月 2020

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はじめに

患者が新薬を使用できるようになるまでには 12 年以上かかり、すべての研究開発にかかるコストは平均で 10 億ユーロを超えます。

医薬品の開発は、リスクの高い投機的事業です。開発中の大半の物質 (約 98%) は、新薬として市販されることはありません。その理由の多くは、開発中に確認されたベネフィットとリスク (負の副作用) を考慮すると、既に市販されている医薬品とうまく比較できないためです。

新薬の開発は、10 段階のステップに分けることができます。本稿では、「ステップ 5:非臨床安全性試験。

ステップ 5:非臨床安全性試験

臨床試験に進んでも安全かどうか。医薬品の開発プロセスのこの段階では、動物を使った安全性試験を実施します。この試験の実施方法は、医薬品の安全性試験の実施基準 (GLP) の具体的なルールと規制によって定められています。動物の安全性試験で安全性プロフィールが確立されない限り、人体での候補医薬品の試験 (臨床試験) を実施することはできません。医薬品の開発は、厳密な管理下で行われます。試験の内容と実施方法に関するルールや規制は、法律によって定められています。

非臨床試験の作業を実施に移すまでには、適切なすべての試験を完了できるように、大量の候補化合物を製造する必要があります。この製造工程も、医薬品の製造管理および品質管理の基準 (GMP) と呼ばれる厳密なガイドラインと規制に従う必要があります。

これらの規制では、合理的な情報を得るために実施する必要がある試験と、使用する動物の種類が規定されています。試験では、次の効果を確認します。

  • 動物に対する全体的な効果
  • 動物のすべての組織と臓器に対する効果 (全身毒性試験)
  • 動物の正常な生殖能および発生能に対する効果 (生殖毒性試験)
  • 皮膚または目に対する効果 (局所毒性試験)
  • すべてのアレルギー (過敏症試験)
  • 染色体および遺伝子に対する効果 (遺伝毒性試験)
  • 発癌性に対する何らかの効果 (発癌性試験)

これらは、以降で示す試験により確認します。

毒性試験の種類

  • 系統的な毒性試験
    • 単回投与試験
    • 反復投与試験
  • 生殖発生毒性試験
    • 雄受胎能試験
    • 雌生殖発達毒性試験
  • 局所毒性試験
  • 過敏症試験
  • 遺伝毒性試験
  • がん原性試験

これらの試験では、動物における安全性プロフィールだけでなく、次のような重要な情報が明らかになります。

  • 物質がどのように体内に吸収されるのか (Absorption: 吸収)
  • 体内での物質の分布 (Distribution: 分布)
  • 身体による物質の分解 (Metabolism: 代謝)
  • 物質が身体からどのように排出されるのか (Excretion: 排泄) 。

これは、頭文字を取って「ADME」と略される場合もあります。

これらすべての情報を使用して、候補化合物を最初のヒトでの試験 (臨床試験) に進めるかどうかを判断し、進める場合はその用量を決定します。

ヒトでの臨床試験へ進むためには、必要なすべての非臨床毒性試験において、候補化合物が許容可能な安全性プロフィールを示さなければなりません。しかし、すべての非臨床安全試験が完了するわけではありません。たとえば長期的な発癌性試験は平均して 2 年の期間を要するため、治験と並行して継続します。

参照文献

  1. Edwards, L., Fox, A., & Stonier, P. (Eds.).(2010).Principles and practice of pharmaceutical medicine (3rd ed.).Oxford, UK:Wiley-Blackwell.

添付文書

A2-1.02.4-v1.1

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