Last update: 16 10月 2020
はじめに
候補化合物は、第 I 相 (ファースト イン ヒューマン) 治験の一環としてヒトに投与される前に非臨床試験で厳しい安全性試験と有効性試験を受ける必要があります。
調和国際会議 (ICH) は、候補化合物が人間に投与される前に非臨床プログラムで満たされるべき要件を提示しています。1 ICH モジュール 3 (非臨床試験) では、以下の試験の実施が求められています。
- 薬理試験
- 一般毒性試験
- 毒物動態および非臨床薬物動態試験
- 反復投与毒性試験
具体的な状況に応じて、個々の事例に応じた複数の追加非臨床試験が実施されます。たとえば、以下のような試験です。
- 発癌性の評価
- 光毒性、免疫毒性、幼若動物毒性など
- バイオテクノロジー由来製品 (ICH トピック S62 に基づくガイドライン)
- 致死的な疾患や重篤な疾患 (現時点で有効な治療法のない HIV 感染症や先天性酵素欠損症など)
- 非臨床プログラムにおいて非臨床試験を短縮、延期、除外、追加できる革新的な治療法 (siRNA やワクチン アジュバントなど) を使用する医薬品
非臨床安全性評価プログラムの目的は、より具体的には、毒性効果の特性評価、標的臓器の特定、用量依存性の明確化、毒性の曝露との関係、回復性などがあります。
下表には、臨床プログラムの開始前に完了する必要のある標準的な非臨床プログラムが示されています。
試験のタイプ | 試験の目的 |
---|---|
安全性薬理学コア試験 | 心血管系、呼吸器系、中枢神経系 (CNS) に対する効果を評価 |
薬効を裏付ける試験 | 生体内試験および試験管内試験あるいはそのいずれかによって候補化合物の標的に対する作用機序または効果を評価 |
薬物動態試験および毒物動態試験 | 動物とヒトに対する代謝および血中タンパク結合データに関して、試験管内試験中に収集されたデータ毒性試験からの全身曝露データ |
急性毒性試験 | 2 種の哺乳類における単回投与毒性試験。ただし、毒性試験に使用される種の最大耐量を定める試験中に完了させることも可能。 |
反復投与毒性試験 | 提案された臨床プログラムの期間、治療指標、および適用範囲に応じて長さは異なる。1 種は齧歯動物ではない 2 種を使用して 2 週間以上 |
その他の重要な試験 | 光毒性に対する検査 (光を浴びることで生じる皮膚の反応) など |
動物での反復投与毒性試験は、意図されているヒトの治験期間とほぼ同じ、またはそれよりも長い曝露時間になるようにデザインされます (下表を参照)。表でわかるように、2 週間以上にわたる 2 種 (1 種は非齧歯動物) の反復投与毒性試験は、一般的に 2 週間未満のあらゆる治験を支持します。より長期にわたる治験は、それと等しい期間またはそれ以上の反復投与毒性試験によって支持される必要があります。6 か月の齧歯動物試験と 9 か月の非齧歯動物試験は、通常、治験において 6 か月を超える期間の治療を支持します。
治験の最長期間 | 治験を支持するために推薦される反復投与毒性試験の最小期間 | |
---|---|---|
齧歯動物 | Non-rodents | |
最大 2 週間 | 2 週間a | 2 週間a |
2 週間から 6 か月 | 治験と同じb | 治験と同じb |
6 か月以上 | 6 か月b,c | 9 か月b,c,d |
a米国では、2 週間の試験に代わるものとして、単回投与毒性試験を延長することで単回投与ヒト試験を支持することができます。b 状況によって、3 か月の齧歯動物試験および 3 か月の非齧歯動物試験のデータが得られている場合は、3 か月を超える治験を開始することができます。個々の事例に応じて、慢性、生存中、および剖検のデータによってこの延長が認められることがありますc 小児集団が主たる集団で、既存の動物試験によって発育に対する懸念が示されることがあります。これらの事例では、幼若動物を用いた長期の毒性試験が適切な場合もあります。d EU においては非齧歯動物による 6 か月間の試験が認められています。しかし、それを超える期間の試験を実施済みの場合に、追加で 6 か月の試験を実施することは適切でありません。 |
医薬品販売承認申請 (MAA) のために必要な推奨の反復投与毒性試験期間は下表のとおりです。
適応される治療の期間 | 齧歯動物 | Non-Rodent |
---|---|---|
最大 2 週間 | 1 か月 | 1 か月 |
2 週間を超えて 1 か月まで | 3 か月 | 3 か月 |
1 か月を超えて 3 か月まで | 6 か月 | 6 か月 |
3 か月超 | 6 か月a | 9 か月a,b |
a 小児集団が主たる集団で、既存の動物試験によって発育に対する懸念が示されることがあります。これらの事例では、幼若動物を用いた長期の毒性試験が適切な場合もあります。b EU においては非齧歯動物による 6 か月間の試験が認められています。しかし、それを超える期間の試験を実施済みの場合に、追加で 6 か月の試験を実施することは適切でありません。 |
参照文献
- International Conference on Harmonisation (2009).Guidance on nonclinical safety studies for the conduct of human clinical trials and marketing authorisation for pharmaceuticals M3(R2).Step 5 Geneva: ICH. Retrieved 11 July, 2021, from https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/ich-guideline-m3r2-non-clinical-safety-studies-conduct-human-clinical-trials-marketing-authorisation_en.pdf
- International Conference on Harmonisation (2011).Preclinical safety evaluation of biotechnology-derived pharmaceuticals S6(R1).Step 4 version.Geneva:ICH.Retrieved 27.7.2015, from:
https://database.ich.org/sites/default/files/S6_R1_Guideline_0.pdf
添付文書
A2 2.02.3 V1.2