生物学的利用能と生物学的同等性

Last update: 8 7月 2015

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生物学的利用能

生物学的利用能とは、投与された医薬品の用量のうち変化せずに血流 (体循環) に到達する割合 (パーセント) のことです。

医薬品を使用する場合、必ずその医薬品の活性物質、つまり有効成分 (API) が体内に入ることを望んでいます。しかしながら治療効果を得るためには、活性物質が体内に入るだけでは不十分です。活性物質は、その物質が効能を発揮すべき体内の特定の部位に適切な用量で到達する必要があります。このような部位を「標的部位」と呼びます。また、活性物質は一定の時間内に標的部位に到達し、決められた時間にわたり効能を発揮できなければなりません。

血流に直接注入した場合、つまり静脈内注射 (IV) を行った場合、生物学的利用能は 100% と定義されます (以下の図を参照)。

注射を行うと、活性物質は血流内の複雑な経路をたどって標的部位に到達します。生物学的利用能を評価する場合は、血液サンプルを採取して活性物質の血中 (体循環) 濃度を測定します。つまり、活性物質が血中に直接投与されるため、注入直後の生物学的利用能は 100% になります。これは、上記の図では まさにy 軸に相当します (静注生物学的利用能)。したがって 75 ミリグラム (mg) の活性物質を血流に注入した場合、100% とは 75 mg の活性物質に相当します。

活性物質が血流によって体内を循環すると、一部の活性物質が代謝または排出されるため、体内の活性物質の濃度は時間の経過とともに低下することになります (上記の図を参照)。生物学的利用能プロフィールは、活性物質に対して身体が受ける暴露の全体を表す曲線下面積 (AUC) を調べることによって評価され、他の医薬品と比較されます。最高濃度の活性物質が血中で見つかった時間を Tmax と呼び、血流中の最高濃度の活性物質を Cmax と呼びます。

上記の図で示されているものと同じ活性物質を別の経路、たとえば錠剤により経口投与した場合、生物学的利用能は 100% を下回ります (下記の経口生物学的利用能の図を参照)。

経口バイオアベイラビリティ

錠剤嚥下後の有効成分の割合、試験時間 15 時間。AUC は影付きの部分です。Tmax とは血流中で見つかった最高濃度の医薬品の時間のことです。一方、Cmax とは血流中で見つかった最大濃度の医薬品のことです。

静脈内投与よりも経口投与の場合のほうが生物学的利用能が低くなる仕組みは、以下の図 (経口生物学的利用能 vs 静注生物学的利用能) に示すとおりです。

錠剤またはカプセルを飲み込むと、1~2 分後に胃に到達します。1 錠剤またはカプセルは胃で溶解され、活性物質の一部が血流に吸収されます。薬剤の成分は小腸へと運ばれ、ここで吸収が完了します。消化器系から吸収される量には、大きなばらつきが生じる場合があります。胃や腸から吸収される量が不十分な場合、あるいはまったく吸収されない場合は生物学的利用能が低くなるため、このステップは使用に影響する重要なものといえます。

活性物質が吸収されると、まず肝門脈に到達し、それから肝臓へと運ばれます。これは肝臓における活性物質の初回の代謝であり、「初回通過代謝」と呼ばれます。活性物質によっては、この初回の代謝の段階で最も多くの量が代謝されます。活性物質の非代謝部分 (通常は 100% 未満) は、肝静脈を経由して体循環に到達します。実際に体循環に到達する量は、「絶対的生物学的利用能」と呼ばれます。

絶対的生物学的利用能とは、非静脈内投与後の体循環における API の生物学的利用能と、静脈内投与後に同じ医薬品での生物学的利用能とを比較したものです。非静脈内投与で吸収された API を、相当する同じ医薬品を静脈内投与した場合と比較してパーセントで表しています。

つまり、絶対的生物学的利用能では常に静脈内投与が基準となります。

これに対し相対的生物学的利用能とは、ある医薬品の配合 (A) を同じ医薬品の別の配合 (B) と比較して算出したものであり、通常は静脈内投与以外の方法や、異なる経路での投与を基準として確立します。

生物学的利用能は、他のさまざまな要因による影響を受け、人によって異なります。生物学的利用能の例については、添付資料のファクト シートをご覧ください。

生物学的同等性

生物学的同等性とは、同様の生物学的利用能を持つ、同じ剤形の同じ薬剤を 2 種類の方法で製剤した場合の関係性を示したものです。

相対的生物学的利用能は、複数の配合を比較する目的だけでなく、同じ活性物質を持つ別の製薬会社が製造した 2 種類の錠剤 (または同じ配合の他の医薬品) を比較する必要がある場合にも使用されます。たとえば、A 社の錠剤はB 社の参照錠剤 (ブランド薬) と比較して、ジェネリック医薬品とされています。錠剤Aが錠剤Bと生物学的に同等であることを確認するには、2 種類の錠剤の生物学的利用能の比率を比較します2

追加資料

  • Food and Drug Administation (2002).Guidance for industry:Bioavailability and bioequivalence studies for orally administered drug products – General considerations.Rockville, MD:Food and Drug Administration.Retrieved 23 June, 2015, from http://www.fda.gov/downloads/Drugs/DevelopmentApprovalProcess/HowDrugsareDevelopedandApproved/ApprovalApplications/AbbreviatedNewDrugApplicationANDAGenerics/UCM154838.pdf
  • Wang, H.、Li, Q.、Reyes, S.、Zhang, J.、Xie, L.、Melendez, V.、Hickman, M.、Kozar, M.P.(2013).Formulation and particle size reduction improve bioavailability of poorly water-soluble compounds with antimalarial activity.Malaria Research and Treatment, Retrieved June 23, 2015, from http://dx.doi.org/10.1155/2013/769234
  • Johnson, J.A.(2000).Predictability of the effects of race or ethnicity on pharmacokinetics of drugs.International Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics、38、53-60。

参照文献

  1. Tatum, R.P., Shi, G., Manka, M.A., Brasseur, J.G., Joehl, R.J. and Kahrilas, P.J.(2000).Bolus transit assessed by an esophageal stress test in postfundoplication dysphagia.Journal of Surgical Research, 91, 56–60.
  2. MobiSystems, Inc. (2007).Dorland's Medical Dictionary for Health Consumers.[Mobile application software].

添付文書


A2-1.16-V1.2

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