医薬品の情報

Last update: 29 9月 2015

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はじめに

正確かつ最新の医薬品の情報は、患者と医療従事者の両方にとって不可欠です。

人は病気にかかったとき、病院に行き薬の処方箋をもらいます。患者には次のような多くの質問が浮かぶかもしれません。

  • この薬は食事と一緒に服用できるのか。
  • この薬は妊娠中に服用できるのか。
  • この薬は他の服用中の薬と相互作用するのか。

このような質問については、医薬品と一緒に包装内に入っている折り込み印刷物の添付文書 (package leaflet: PL) により答えが得られます。PL の内容は、医薬品情報に対する詳細な要件事項を定めた欧州連合 (EU) 法規によって定められています。指令 2001/83/EC1 では、提供するべき 4 つの異なる種類の情報について要求事項が定められています。

  • 包装の表示 (直接および包装箱)
  • 医療従事者向けの製品概要 (SmPC)
  • 患者向けの添付文書 (PL)
  • 欧州公開医薬品審査報告書 (EPAR)

指令では、これらの情報の作成方法について以下の主要な要求事項が定められています。

包装の表示

医薬品の表示 (内側 (直接) および外側包装) に記されている文章は、添付文書と同様に規制されています。表示には、患者のみではなく、流通チェーンの他の人々 (医師や薬剤師など) にも関連性の高い情報が記されています。患者向けには、特別な保管状態 (要冷蔵保存または要遮光保存など) に関する情報が記載される場合があります。薬局向けには、名称と有効成分、投与経路などに関して製品を識別するための情報があります。また、ロットが製造業者によって回収される場合にロット番号が重要になります。

すべての患者が表示を読めることが重要です。医薬品の外箱には必要な情報を記載する必要があります。包装の表示は、印刷と視力障害者用の点字文字の両方で表示する必要があります。

表示の要件は EU 内で統一されています。しかし、各 EU 加盟国は以下のいずれか、または複数の内容を追加的に表示に含めることを決定できます。

  • 医薬品の価格
  • 償還条件
  • 法的状況 – 「処方せん医薬品」または「非処方せん医薬品」(一般用医薬品 (OTC))
  • 真正性と識別 – たとえばバーコード

これらの情報は、明確に区別できるように外箱の 1 か所の囲み枠内 (ブルーボックスと呼ばれます) に記載されています。

添付文書 (PL)

製薬会社は、患者に必要かつ有用な製品概要 (SmPC) のすべての情報を含む添付文書を提供する必要があります。PL の順序と内容は厳密に規制されています。添付文書作成の指針となる基本理念は、患者が PL を読んだ後に、医薬品の概要、使用目的、および使用方法について十分に理解を得られるようにすることです。

製品 X の添付文書の各セクションは次のとおりです。

  1. X とはどのようなものか、使用目的は何か
  2. X を服用または使用する前に知っておく必要があること (たとえば禁忌、食物や他の医薬品との相互作用、注意事項)
  3. X の服用または使用方法
  4. 可能性のある副作用
  5. X の保管方法
  6. 包装物の内容とその他の情報 (製造者および販売承認保有者など)

起こりうる医薬品副作用や有害事象 (ADR) に関する情報は、PL の重要な要素です。新薬が承認された時点では、すべての ADR が分かっているわけではありません。まれな ADR は、大規模な患者集団が医薬品を服用した後に初めて発現することがあります。新しい ADR の調査には、患者の関与を得ることが重要です。患者は、医師または薬局のどちらかに有害事象を報告できます。多くの EU 加盟国では、患者は規制当局に直接報告できる場合があります。

医薬品安全性監視に関する法律では、新しい ADR を報告する重要性について患者に通知することが義務付けられています。以下に示されるように、標準の文言がすべての PL に記載されています。

「副作用が現れたら、医師、薬剤師、または看護師に連絡してください。これには、この添付文書に記載されていない起こりうる副作用も含まれます。国内の報告システムから副作用を直接報告することもできます。副作用を報告することにより、この医薬品の安全性に関するより多くの情報提供にご協力いただけます」。

添付文書のレビューへの患者の関与

企業は、適切な患者団体と協議することにより、製品情報 (内容およびレイアウトの両方) が読みやすく明瞭で使用が簡単であることを確実にし、患者が重要な情報を添付文書内で見つけ、理解し、適切に行動できるようにする必要があります。そのための 1 つの方法は、添付文書の「ユーザーテスト」を実施することです。この目的のために、欧州委員会は 「Guideline on the readability of the labelling and package leaflet of medicinal products for human use (ヒト用医薬品の表示および添付文書の可読性に関するガイドライン)」を策定しました。2

製品概要

表示と添付文書に加え、企業は製品概要 (Summary of Product Characteristics: SmPC) を提供する必要があります。製品概要は、新薬の承認プロセスに不可欠な文書です。この文書には医療従事者向けに要約した形式ですべての必要な情報を含める必要があります。

SmPC には、選択した医薬品のベネフィットとリスクについて患者に説明する際に医療従事者が必要とする情報が含まれています。さらに、使用に関する詳細な指針とともに、投与期間中にするべきことおよび避けるべきことに関する適切な警告が含まれています。SmPC は、医薬品の有害事象、安全性、およびベネフィット リスク バランスに関する最新情報を含み、最新の状態に保たれます。

欧州公開医薬品審査報告書 (EPAR)

EPAR には医薬品に関する公開情報が記載されています。その情報には医薬品の評価方法とともに一般の人々に分かりやすい概要も含まれています。目的は透明性のある有用な情報を提供することです。

これらの公開文書には、所轄官庁で実施した評価の資料や結果に含まれる情報の概要が記載されています。ただし、一部の情報は秘密情報とみなされ含まれません。通常、これには製品の製造に関する詳細情報があります。EPAR は、医薬品に関する最新の規制情報を反映するために定期的に更新されます。

医薬品情報に対する変更

SmPC および PL の関連内容については、「variation application (変更申請)」を提出せずには変更できません。このような変更は企業の他に規制当局によっても開始できます (製品の安全性または有効性に関する新しい知識が得られた場合など)。「referral (付託)」として知られる手順から、規制上のイニシアティブが発足される場合があります。付託は、たとえば EU 加盟国または委員会によって開始され、EMA 委員会内の科学的考察を伴います。

新薬については、患者への販売が開始された後は、厳密にモニタリングする必要があります。上述されるように、医薬品が大規模な患者集団にさらされるのは、医薬品が販売されたときのみです。そのため、よりまれな ADR は販売後にのみ見つかる場合があります。規制当局と製薬会社の両方が ADR 報告書を収集します。定期的安全性最新報告 (PSUR) にまとめられた販売承認後の情報に基づき、ベネフィット リスク バランスを定期的に再検討および再評価します。これらの再評価の結果として生じた新しい安全性情報によって、SmPC および PL が更新される場合があります。

ADR の報告作成後、規制当局は安全性に関する付託を開始して、医薬品のベネフィット リスク バランスを再評価し、必要に応じて製品情報を更新する場合があります。これは新製品または既存の製品が対象の場合があります。このような場合には、EU 内で統一された措置が重要になります。すべての患者および医師がベネフィットまたはリスクに関する新しい情報を入手できる必要があります。

新しいまたは重篤な ADR の場合は、緊急の措置が必要になる場合があります。このような場合の 1 つの可能性として、「Urgent Union Procedure (EU における緊急手続き)」を開始する方法があります。この手続きは EU 加盟国または委員会によって開始できます。これらの結果は、医薬品販売承認条件の大幅な変更、医薬品販売承認の一時停止または取り消しの場合があります。最も一般的には、この種類の EU における緊急安全性手続きの結果として、EMA 発行の安全性に関する通達や、影響を受けた医薬品の製品情報更新を行います。

医薬品情報に対する患者の関与

上述されるように、医薬品に関する情報の多くは特に患者に向けられています。

EMA では、EMA が作成した医薬品に関する情報 (EPAR や PL の一般読者に分かりやすい概要など) のレビューを患者や消費者代表に求めています。対象集団にとって情報が読みやすく理解しやすいかどうかフィードバックを得ることが目的です。

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