服薬遵守

Last update: 16 10月 2020

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服薬遵守とは何ですか?

服薬遵守 (「患者の遵守」または「コンプライアンス」ともいう) とは、患者が薬を服用する際に、タイミング、頻度、用量に関する医師の指示にいかに従うかです。

患者や医師は治療計画に賛同しなければなりません。遵守は患者がその計画に正しく従う程度を示します。

患者は次の場合に遵守していると記載されます。

  • 処方箋を薬局に持参し、薬を受け取る。
  • 医師や添付文書の指示どおりに薬を自分で投与する。これにより正確に、適切な時に、正しい用量で薬を服用していることになります。
  • 医師から他に指示がない限り、治療の過程を継続する。

遵守しない患者とは次のような場合です。

  • 処方箋を薬局に持参せず、薬を受け取らない。
  • 医師や添付文書の指示どおりに薬を投与しない。
  • 治療の過程を完了しない。

なぜ服薬遵守が重要なのですか?

服薬遵守が不良だと、治療の潜在的な臨床的ベネフィットが減少し、その患者の健康に思わしくない結果が生じる場合があります。この結果、薬の費用対効果に悪影響を及ぼします。遵守しないことで公衆衛生にも影響があり、社会や経済に直接的かつ間接的コストがかかります。

不遵守による直接的な経済面のコストとは次のとおりです。

  • 医師への不必要な訪問。
  • 公立病院、救急室、私立病院への入院。
  • 診断検査の追加。

不遵守による間接的な経済面のコストとは次のとおりです。

  • 患者の収入の損失。
  • 患者の生産性の損失。

さらに遵守不良は患者個人レベルをはるかに超えて疾患疫学に悪影響を及ぼし、医療制度全体に大きな影響を持つおそれもあります。たとえば、抗生物質による治療に対して遵守不良の結果、細菌の耐性株が発達し、結果として感染症発生率が上昇して疾患が蔓延する可能性もあります。遵守不良と耐性菌の発達の関連性は、結核などの慢性感染症ではっきり証明されています (http://www.jhasim.com/files/articlefiles/pdf/ASM_6_7C_652-658_R1.pdf)。

不遵守の理由とは何ですか?

不遵守には 2 つの理由があります。

  • 非意図的 – 患者がコントロールできない理由。
  • 意図的 – 患者が服用しないまたは治療を中止すると主体的に決定する場合。

非意図的な不遵守

非意図的な不遵守には次のような理由があります。

  • 患者が予定された服薬を忘れてしまう。
  • 患者が医薬品を買う余裕がない。
  • 医薬品の供給不足。

意図的な不遵守

意図的な不遵守には次のような理由があります。

  • 患者の疾患や治療法に対する理解が乏しい。
  • 患者の信念。
  • 患者が治療は必要ないと考える (たとえば調子が良いからという理由で)。
  • 患者の副作用に対する恐怖心。

不遵守の重要な要素

主要な因子には、次が含まれます。

  • 医薬品の副作用。
  • 医薬品の必要性の認識欠如。
  • 医薬品の情報不足や誤った情報による懸念。
  • 医薬品の有効性の認識欠如。
  • 医薬品のコスト。

遵守に影響を与えると報告されているその他の要因には次のようなものがあります。

  • 対処スキル。
  • 治療医への信頼やコミュニケーション。
  • 状況を管理する感覚を持つ必要性。
  • 患者の治療方針決定への関与。
  • 病気への個人的な感受性についての考え。
  • 病気の重篤性についての理解。
  • うつ病。
  • 社会的支援。
  • 社会的状況、ホームレスなど。

遵守に関する誤解の解消

誤解 1:不遵守は疾患の特徴

慢性 (長期的な) 疾患でも短期的な疾患でも、遵守不良は問題です。不遵守と疾患の種類との関連性は ありません

誤解 2:もの忘れは遵守不良の最大の理由

もの忘れにより服薬遵守が時々、不定期に抜けてしまいます。長期的な遵守は、患者による治療に対する信念と体験の意思決定プロセスと評価の結果です (1) 。 

誤解 3:医療提供者は患者に医薬品情報を十分提供し、遵守させている

研究によると医療提供者の処方医薬品に関するコミュニケーションは一貫していません (2) 。患者は処方される医薬品に関する情報を希望するため、十分提供されない場合はストレスを感じます (3) 。

誤解 4:医療提供者と患者は遵守について定期的に議論

医療提供者は患者が遵守するものだと仮定します。ところが実際は、遵守の意思を医療提供者には必ずしも伝えません (4) 。

結論

服薬遵守は患者と医療提供者双方によるもので、互いに協力して患者が次のような状況になるようにします。

  • 医薬品の服用方法を知る
  • 医師に丁寧に 説明される
  • 服薬を希望する
  • 服薬が可能である
  • 意思決定に関与するさらに
  • 処方される医薬品を 理解可能 に思う。

追加資料

  • http://www.eu-patient.eu/globalassets/policy/adherence-compliance-concordance/adherence—joint-briefing-paper.pdf
  • http://www.jhasim.com/files/articlefiles/pdf/ASM_6_7C_652-658_R1.pdf

参照文献

  1. McHorney CA. The Adherence Estimator:A brief proximal screener for propensity to adhere to medications for chronic disease.CMRO, 25(1), 2009, 215-38.
  2. g. Gardner ME, Rulien N, McGhan WF, Mead RA.A trial of patients’ perceived importance of medication information provided by physicians in a health maintenance organisation.Drug Intell Clin Pharm.1988;22:596–598; Makoul G, Arntson P, Schofield T. Health promotion in primary care:physician-patient communication and decision making about prescription medications.Soc Sci Med.1995;41:1241–1254; Tarn DM, Heritage J, Paterniti DA, Hays RD, Kravitz RL, Wenger NS.Physician communication when prescribing new medications.Arch Intern Med.2006;166:1855–1862.
  3. Bailey BJ, Carney SL, Gillies AH, McColm LM, Smith AJ, Taylor M. Hypertension treatment compliance:what do patients want to know about their medications?Prog Cardiovasc Nurs.1997;12:23–28; Ziegler DK, Mosier MC, Buenaver M, Okuyemi K. How much information about adverse effects of medication do patients want from physicians?Arch Intern Med.2001;161:706–713.
  4. Lapane KL, Dube CE, Schneider KL, Quilliam BJ.Misperceptions of patients vs providers regarding medication-related communication issues.Am J Manag Care.2007;13:613–618.

 

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