欧州薬局方:医薬品の品質基準

Last update: 16 10月 2020

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はじめに

薬局方 (pharmacopoeia) という言葉はギリシャ語の φαρμακοποιΐα に由来します。この単語は文字通りには「薬の作り方」を意味し、さまざまな医薬品の製法が記載された本の種類を表します。このような書籍が古代から使われてきました。

以前は、薬局方の目的は高品質な医薬品を確保することでした。薬局方には、次を含む医薬品の個別の製法が記載されています。

  • 医薬品の組成 – 何が含まれているか
  • 調製方法 – 医薬品をどのように作るか
  • 医薬品の価格 (多くの場合)

現在の薬局方

現在の薬局方の基本的な目的は以前と変わらず、高品質な医薬品を確保することです。医薬品は薬局で製剤されることはなくなり、先進国のほとんどすべての医薬品は工業的に製造されます。そのため、医薬品の製法は薬局方に記載されなくなりました。代わりに、欧州薬局方 (Ph. Eur.) などの現代の薬局方の基本的な要素は以下のようになっています。

  • 有効成分の品質基準
  • 剤形の一般基準
  • 医薬品製造の一般基準
  • 最終製品の医薬品各条 (モノグラフ) (少数)
  • 標準用語

欧州薬局方の歴史

歴史的に、欧州のすべての国で各国の薬局方を作成し維持していました。第二次世界大戦後、国際化された薬局方の新たな傾向が現れました。数国からなるグループが国別の薬局方を欧州薬局方のような共通の薬局方に置き換えるよう協働を開始しました。その他の地域でも各自の共通の薬局方を保持しています (米国薬局方 (USP) など)。

1952 年以降、世界保健機関 (WHO) は国際薬局方を発行しています。当初は、市販されているすべての医薬品を世界規模で収載していました。現在の国際薬局方は以下に焦点が置かれています。

  • 必要不可欠な医薬品の WHO による一覧
  • 公衆衛生上の重要性を持つ優先医薬品

欧州薬局方の内容

欧州薬局方には、医薬品の一連の一般的な医薬品各条 (モノグラフ)、物質と医薬品の一般的な分析手法、剤形 (錠剤、カプセル、注射など) に対する一般的要件が記載されています。分析手法は、薬局方に記載されていない物質および医薬品用に製薬業界が使用することもできます。

欧州薬局方の大部分は、品質基準から構成されており、医薬品各条と一般的手法のセクションの両方に記載されています。品質基準には、物質の同定やその品質と定量的な強度の評価に用いられる分析手法が含まれます。有効成分の品質基準でおそらく最も不可欠な部分は不純物のセクションです。

医薬品の有効成分は、化学分子の構造により薬理学的に活性がある状態です。純度が 100% の物質はありません。不純物は以下から生じることがあります。

  • 製造方法 – 物質がどのように製造または合成されたか
  • 該当する場合、有効成分の分解

このような不純物は、有効成分そのものに少なからず類似した化学構造を持ちます。不純物は、有効成分に類似した方法または異なる方法で、薬理学的な活性を持つ場合もあります。不純物には、毒性などの好ましくない作用があります。

一部の不純物は、新薬開発企業が物質の有効性と安全性を試験した時点に存在しています。これは、不純物が、有効成分とともに、臨床試験や毒性試験の一部になることを意味しています。したがって、その程度の不純物の存在は容認されます。医薬品各条には手法によって検出可能なすべての不純物が記載され、各不純物の許容レベルが定義されています。

合成方法が変更された場合、または特許の期間満了後に別の企業が同じ物質を製造する場合、問題が生じることがあります。これらの変更で製造された製品の品質に生じる影響について評価することが重要です。特に次の疑問点を検討する必要があります。

  • 新たな不純物が出現する可能性があるか。
  • 出現する場合は、医薬品各条に記載された手法によって検出できるか。
  • 許容レベルはどのようになるか。

物質を製造する企業は、新薬承認の申請時、またはその物質を含む既存の医薬品の変更時に、欧州薬局方の医薬品各条の適合性に関する文書を規制当局に提出することを要求される場合があります。

欧州医薬品品質部門 (EDQM) の役割

EDQM および欧州薬局方委員会は、欧州評議会の機関です。欧州薬局方は、EU で法的地位を得ており、EU の公的品質基準の策定を行う機関として EU 指令で認められています。欧州薬局方委員会は欧州医薬品品質部門 (EDQM) 内に組み込まれています。欧州薬局方委員会は、医薬品各条および薬局方の各章全般の作業の責任を負います。実際の作業は多くの専門家集団によって行われます。

EDQM は、適合証明書 (Certificate of Suitability: CEP) と名付けられた概念を確立しました。有効成分の製造者はこの証明書を EDQM に申請する場合があります。申請書には、物質の化学合成に関する全詳細や、潜在的および実際に存在する不純物についても記載されている必要があります。物質の品質が欧州薬局方の医薬品各条によって規制されることを製造者が証明できる場合、EDQM は CEP を付与します。

CEP は医薬品販売承認申請 (MAA) の書類に含まれています。規制当局は、欧州薬局方の医薬品各条が有効成分の品質管理に十分対応することを示す適切な文書として CEP を受理します。

EDQM は、欧州市場の医薬品に関する分析管理の役割も担います。公的認定試験検査機関 (OMCL) のネットワークは、ストラスブール市にある EDQM によって統括されています。OMCL は、欧州市場の医薬品に関する分析管理を実施する責任を負います。

参照文献

https://www.edqm.eu/en/european-pharmacopoeia-ph-eur-9th-edition

https://www.edqm.eu/

A2-5.17-v1.1

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