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業界主導型医薬品研究開発における患者の関与に関するガイダンス

医薬品研究および開発プロセス全体での患者の関与のための包括的原則

欧州患者アカデミー (EUPATI) は、患者団体、大学、非営利団体、製薬会社のパートナーの33 の団体からなる全欧州革新的医薬品イニシアティブ (IMI) プロジェクトです。EUPATI 全体で、「患者」という用語は、あらゆる疾患にあるすべての年齢層のグループを意味します。EUPATI は、疾患固有の問題または治療ではなく、一般的に医薬品の開発のプロセスに焦点を当てています。適応症に関する情報や、年齢固有のまたは特定の医学的介入については、医療従事者や患者団体が扱うべき分野であり、EUPATI の活動範囲には含まれません。詳細については eupati.eu/ をご覧ください。

医薬品の開発と評価に関与している専門家の大部分は、民間部門および公的部門に所属する科学者です。特定の疾患を伴って生活することがどのようなものあるか、ケアがどのように行われ、医薬品が日々どのように使用されているかを理解するために、患者の知識と経験を引き出す必要性はますます高まっています。これらの情報は、新たな効果のある医薬品の発見、開発、そして評価を改善するのに役立ちます。

様々な状態の、あらゆる年齢層の患者やその代表者、その他の利害関係者との構造化された相互作用は必要であるとともに、医薬品の使用者の見解を検討でき、かつ検討すべき場所である国内およびヨーロッパにおいての情報交換や建設的対話を可能にします。医療制度だけでなく、医療行為、法制度も異なる可能性がある点を考慮に入れることが重要です。

私たちは、医療専門家団体、受託研究機関、患者および消費者団体*、学界、科学および学術団体、規制当局および医療技術評価 (HTA) 機関および製薬業界などの、さまざまな利害関係者との緊密な協力と提携を勧告します。患者の関与により、患者とその他の利害関係者間の透明性、信頼、そして相互尊重が向上することは、これまでの経験が示しています。

医薬品の発見、開発および評価への患者の貢献が、利用できるエビデンスと見解の質を高めることが知られています。[1]

さまざまな利害関係者との患者の関与に関する既存の実施基準は、研究開発 (R&D) の全範囲を網羅しているわけではありません。EUPATI のガイダンス文書は、医薬品の研究開発プロセス全体への患者の関与の統合をサポートすることを目的としています。

EUPATI のガイダンス文書は、医薬品の研究開発 (R&D) プロセス全体への患者の関与の統合をサポートすることを目的としています。個別の状況、国内規制、またはそれぞれのやりとりの独自の必要性によりガイダンスから逸脱することも考えられます。本ガイダンスは、最良の専門的判断を用いて個々の要件に適応させる必要があります。

患者の関与を扱う個別のガイダンス文書が 4 種類あります。

  • 製薬業界主導型医薬品 R&D
  • 倫理委員会
  • 規制当局
  • 医療技術評価 (HTA) 。

各ガイダンスで患者の関与の機会が現在ある分野を示しています。このガイダンスは、進展を反映するように定期的に見直し、改定する必要があります。

このガイダンスでは、業界主導型医薬品 R&D における患者の関与について扱います。

次の価値はガイダンスで認識されており、提案されている業務慣例の採用に向けて取り組まれています (7 項)。価値とは以下のとおりです。

 

関連性 患者は独自の知識、見解、経験を持ち、業界主導型研究開発に欠かせない証拠に貢献します。
公平性 患者は他の利害関係者と同等に医薬品の R&D プロセスに貢献する権利があり、効果的に関与できる知識や経験にアクセスできます。
公平性 医薬品の R&D への患者の関与は、特定の健康問題をもつ患者の多様なニーズを業界の要求事項を補いつつ理解するよう努めることで、公平性に貢献します。
能力構築 患者の関与のプロセスは、医薬品のR&Dへ患者を関与させることに対する障壁に取り組み、患者と研究機関が協力して取り組む能力を構築します。

 

以降に策定するガイダンスはすべて、4 つの EUPATI ガイダンス文書で述べたやりとりを扱う既存の国内規制と整合する必要があります。

免責事項

EUPATI のガイダンスは、医薬品の研究開発 (R&D) ライフサイクルを通して、医薬品の R&D への患者の関与の統合をサポートすることを目的としています。

これらのガイダンス文書は、規範的なものではなく、ステップごとの詳細なアドバイスを提供することを意図したものでもありません。

このガイダンスは、特定の状況、国内の法律、または各相互作用の必要性により使用するべきです。本ガイダンスは、最良の専門的判断を用いて個々の要件に適応させる必要があります。

本ガイダンスが法的問題に関する助言を提示している箇所については、明確な法的解釈として提示されたのでも、正式な法的アドバイスの代わりとなるものでもありません。正式な助言が必要であれば、関与する利害関係者がそれぞれ、法律に関する部署があれば相談するか、管轄の情報源から法的な助言を求める必要があります。

EUPATI は本ガイダンスの利用により生じた、いかなる内容のいかなる結果についても責任は負いかねます。

EUPATI プロジェクトは助成金契約番号 115334 のもと、革新的医薬品イニシアティブ合同事業からの支援を受けました。これは欧州連合の第 7 次枠組みプロジェクト (FP7/2007-2013) と EFPIA 企業の出資金からなる財源援助です。

業界主導型医薬品R&Dにおける患者の関与の導入

医薬品の研究開発 (R&D) に対する患者の参加拡大の重要性や利点は、広く認められています。医薬品の開発やライフサイクルにおいて患者とパートナーを組むための合同の呼びかけが、医薬品企業のリーダーたちによって実施されてきました[2]。患者コミュニティでも同様に、企業に早期段階から医薬品の R&D に患者の関与を組み込むよう長年にわたり呼びかけてきました。

患者に焦点を当てる業界全体の動きがあり、設立したのが患者中心のアウトカム研究所 (PCORI)、FDA の患者集中型医薬品開発 (PFDD) イニシアチブ治験改革イニシアティブ (CTTI)、および患者集中型医薬品開発 (PFMD) 連合です。欧州では、EUPATI および その他の IMI プロジェクトが、特異的な適応だけでなく患者の R&D への関与を一般化する取り組みを先導しています。患者の関与が増えることにより、関与した全団体が多くのベネフィットを得られます。たとえば、満たされていないニーズの特定と理解、研究の優先事項、臨床試験デザインと結果評価の最適化、エンドポイントの策定などです。あらゆる相互作用の目的は、患者ニーズと優先事項を取り入れることにより医薬品 R&D を改善することです。

業界主導型 R&D における患者の関与、および患者と業界間の相互作用についての明瞭なガイダンスの必要性は、次の理由に基づいています。

  • 既存の行動規範 (付録 1 参照) では、相互作用に相当する一般的な記述を除き、業界主導 R&D における患者の関与を十分に説明していない。
  • 意義深い倫理的な相互作用についての包括的なガイダンスが欠如している
  • 患者および患者団体は、特に早期の創薬、開発、承認後の各段階で積極的および長期的に関与すべきであり、相互作用を臨床開発に限るべきではない
  • 活動の実施方法に関して詳細な合意を得ると共に、明らかに禁止されている場合を除いて相互作用を許可されるといった明確で既定の声明を用い、言語は患者の関与に対してより直接的である必要があります。
  • 患者との全ての相互作用は、専門的で、倫理的かつ非営利的な方法で実施する必要があります(地域の規制に従います)。

適用範囲

このヨーロッパ向けガイダンスは、ヒト用医薬品に関する医薬品 R&D ライフサイクル全体の、患者と医薬品業界の間の相互作用を扱っています。このヨーロッパ向けガイダンスは、医薬品 R&D ライフサイクル全体の、患者の関与に関する業界の R&D 機能すべてが対象です。個人や患者団体を含む、承認前と市販後の活動に関して扱っています。.「患者」は、個人としての患者またはその介護者、あるいは関連する専門知識を持つ患者団体の代表のことです (5 項)。現在患者が関与できる部分を示す図 1 を参照してください。しかしこれは関与を制限するということではなく、これらの機会は時間の経過とともに変化し、増大する可能性があります。

全ての活動は、医薬品業界や一般大衆との相互作用を対象とする既存の EU や国内の法律を遵守する必要があります。さらに、企業は社内手順にも従う必要があります。

「患者」を定義する

「患者」という用語は、さまざま共同プロセスの中で患者、患者の擁護者および患者団体から要求される異なる種類のインプットと経験を反映しない不正確な用語として一般的によく使用されます。

本文書およびその他の EUPATI のガイダンス文書で提示されている患者の相互作用の潜在的な役割について用語を明確化するため、私たちは以下の定義で「患者」という用語を使用します。

  • 「個々の患者」とは、疾患と共に暮らしているという個人的経験を伴う人を意味します。「個々の患者」は、 R&D または規制プロセスに関する技術的知識を持っているかもしれませんし、持っていないかもしれませんが、彼らの主な役割は、自身の主観的な疾患と治療の経験で貢献することです。
  • 「介護者」とは、家族または仕事として、あるいは有償またはボランティアのヘルパーのように、個々の患者をサポートする人々を意味します。
  • 「患者の権利擁護者」とは、特定の疾患とともに生きる患者のより大きな集団をサポートする洞察と経験を持つ人々を意味します。「患者の権利擁護者」は、組織と提携している、または提携していない可能性があります。
  • 「患者団体の代表者」とは、特定の問題や疾患領域について患者団体の総括的な意見を述べることを委任された人々を意味します。
  • 「患者専門家」は、疾患固有の専門知識に加えて、トレーニングや経験を経て R&D や規制関連業務の技術的知識があります。たとえば EUPATI フェロー は医薬品 R&D 全般に関して EUPATI のトレーニングを受講した専門家です。

意見が主観的で非難の対象になるという理由で、個々の患者を利害関係者との共同作業に関与させるのを留保するかもしれません。しかし、EUPATI は、規制当局と連携して個人の関与を排除することなく、公平性の価値観を浸透させます。患者タイプと活動内容の点で最適な患者の代表を選ぶやりとりを開始するのは、機関の裁量に任せるべきです (7 項参照)。個々の患者が関与する場合は、もし存在すれば、関連患者機関に通知したり、支援や助言の相談をしたりすることを提案します。

関与前に、いかなる共同プロセスに関しても、関与する人の意見や義務の種類は合意を得ておく必要があります。

透明性

業界主導型医薬品 R&D における患者関与の透明性を高めるために、企業と患者団体は、許可されている範囲で、ウェブサイトを通して年ごとに共同作業を公表する必要があります。患者の個人名や保護されている健康に関する情報は開示するべきではありません。

経験や知識が豊富な人材の数が少ない地域もあるかと思います。こうした事実のために、他の関連団体 (規制当局、他の製薬会社など) との並行した相互作用を通じて、こうした知識の相談や構築をやめてはなりません。ただし、こうした相互作用は開示するべきです。

推奨される業務慣例

患者、患者団体、業界間の長期的なパートナーシップの育成や構築は、全ての当事者にベネフィットをもたらす最善のアプローチで、患者や患者団体の独立心や、頑強で透明性のある業務手順で彼らの表現を見出す既存の行動規範に設定された他の規定を尊重しつつ奨励されています。、しかし、関係の構築は短期的なニーズを満たすためのその場しのぎの相互作用から始まるかもしれないが、理想的にはパートナーシップが構築されるにつれ、さらに頻繁な相互作用に移行するものと認識されています。

患者の関与について、各製薬会社で内部の職務横断的な調整を行い、正規の連絡役を設けることは、関係者全員にとって非常に有益です。

相互に有益な相互作用と適切な準備を確実にするために、関与前の話し合いを行うべきです。適用範囲、相互作用の種類、リソースの要件、およびスケジュールなど相互作用に関する特定の詳細を患者、患者代表、業界の間で開始前に合意し、書面に定めておくべきです。

相互作用の定義

患者、患者代表、業界は相互作用を有意義なものにするため、明確に定めたプロセスや行動をとり、スケジュールに従って進行するよう責任を持つべきです。加えて、参加は全員相互作用の準備をしておきます。

各相互作用の前に、次のことを相互で合意しておきます (該当する場合)。

  • 全ての当事者の独立性、プライバシー、機密事項、予想される事柄に関して必要な保護を提供し、合意された体系的な相互作用を確立するという、患者や共通の関心領域が関与するプロジェクトの目的。(11 項書書面による合意参照)。
  • インプットの種類と関与する者の要求事項
  • 相互作用のツールと方法。たとえば会議の種類や頻度、基本原則、対立事項の解決方法、評価。
  • (範囲内で) 独立性が確保された状態で長期的な業務上のパートナーシップを育成するため、望ましい患者や患者パートナー機関。
  • 関与する患者や患者代表のタイプのプロフィールと人数
  • 活動のアウトプットの活用方法とアウトプットの所有権
  • 関与した患者への結果の通知方法と時期
  • 同意内容や報酬などの契約条件 (11 項書書面による合意参照) 。
  • 特定のプロジェクトによる他の要素

患者の特定、相互作用

相互作用に関与する患者の特定方法は多くあります。主なルートは次のとおりです。

  • 既存の患者団体
  • EUPATI や同様のプロジェクト
  • 患者の参加を募集する宣伝の機会
  • 医療提供者、病院、研究者、その他機関との既存の関係
  • 関連団体により以前送付されてきたリクエスト
  • 現在ある諮問委員会や団体 (EFPIA のシンクタンク、EMA の患者・消費者ワーキング・パーティーなど)
  • 第三者機関

報酬

患者は個人としてだけでなく団体の一員としても、自らの意思で活動に関与する状況が多いということを認識しておく必要があります。したがって、次のことに配慮が必要です。

  • かかったすべての時間に経費を足して報酬として支給する。
    • 提供されるいかなる報酬も、公正で関与の種類に見合ったものであるべきである。理想としては、費用は払い戻しよりも団体のパートナーに直接支払われるとよい。
  • 活動に関与する患者の特定や支援 (ピアサポートグループ、トレーニングおよび準備) の際に患者団体が負担するコストの埋め合わせも検討する。
  • 交通や宿泊など、参加の計画調整を援助する。

報酬には現物支給の間接的なベネフィット (患者団体の無料で提供するサービス) や、患者や患者団体に提供される現物支給の非財政的ベネフィット (講習会、代理サービス、ウェブサイトの設定) も含まれます。

すべての団体は報酬の取り決めについて透明性を保つ必要があります。

書面による合意

書面による合意で少なくとも明確に規定しておくのは、活動とその目的の説明、活動中のやり取りの性質、合意事項 (該当する場合) 、リリース、機密保持、報酬、データのプライバシー、コンプライアンス、利益相反の申告、スケジュールです。相互作用は、共同作業の基本的要素 (例えば関与の規則、コンプライアンス、知的財産、財政支出) が最低限記載されている合意書に基づいて進展します。

合意書が明確であり、適切な知的共有を限定しないように配慮が必要です。

イベントとホスピタリティ

相互作用の方法 (会議、電話会談など) は、患者や患者団体の都合を最優先にし、話し合い、相互に合意されるべきです。相互作用が直接の会議やイベントの展開や実施を必要とする場合、適切な開催場所や提供するホスピタリティのレベルに関して、既存の行動規範や地域の法規制に従う必要があります。

イベントを運営する際、意図する参加患者オーディエンスの出席能力にも配慮し、アクセス、旅行の援助、イベントの申し込みを可能にするように適切な対策を講じる必要があります。

付録 1 – レビュー済み実施基準

認識された基準の多くは、このガイダンス文書の重要な土台となります。

  1. ECAB プロトコル (1997 年創設 EATG の科学ワーキンググループ European Community Advisory Board [ECAB] に関する記述や作業手順書)
  2. 欧州医薬品庁人間科学委員会の「患者・消費者団体とのワーキングパーティー」 (PCWP) 手順の指令、目的、規則 (2013 年 5 月 30 日)
  3. EMA 人間科学委員会の「患者・消費者団体とのワーキングパーティー」 (PCWP) 全適格団体との会議議事録 (2014 年 1 月 31 日)
  4. EMA の活動における患者および消費者の今後の関与に関する 2009 年 12 月 10 日付 EMA 査察論文
  5. 患者や消費者との連携に関する EMA リーフレット (2015 年 4 月 22 日更新)
  6. 相互作用に関する EMA の枠組み (2014 年 10 月 16 日改訂)
  7. 1997 年、ノルウェー、ベルゲンで開催された ECAB 会議からの提言
    EATG ECAB 「我慢できない患者 - 怒りから行動主義へ」
    European Community Advisory Board の歴史、活動モデル、関連性、見通しに関する体系的なレビュー
  8. FDA 患者代表プログラム
  9. FDA 患者中心の医薬品開発、患者の声:FDA の患者中心の医薬品開発イニシアチブからの一連の報告書
  10. FDA 患者中心の医薬品開発:規制当局の意思決定におけるベネフィットとリスクの評価の向上
  11. WMA ヘルシンキ宣言 (世界医師会ヘルシンキ宣言) - Ethical Principles for Medical Research Involving Human Subjects (ヒトを対象とした医学研究の倫理的原則)http://www.wma.net/en/30publications/10policies/b3/index.html

参照文献

  1. EMA の枠組みより抜粋。European Medicines Agency (2014) EMA/637573/2014. http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Other/2009/12/WC500018013.pdf.Last Accessed 21.11.2016.
  2. Hoos A, Anderson J, Boutin M, et al. 2015, Partnering with patients in the development and lifecycle of medicines:a call for action.Therapeutic Innovation & Regulatory Science.

*消費者は医療の議論において利害関係者と認識されています。EUPATI の適用範囲では消費者よりむしろ患者に焦点を当て、教材やガイダンス文書にそれが反映されています。

ウェビナー

2017 年 5 月 4 日にウェビナーが開催されました。このウェビナーで使用したビデオ録画とプレゼンテーションは、次の場所から閲覧できます。https://eupati.eu/webinar/webinar-guidance-patient-involvement-industry-led-rd/

添付文書