Last update: 19 9月 2016
はじめに
欧州連合 (EU) 諸国で医薬品を販売するには、製薬会社が関連規制当局からその医薬品の販売承認 (MA) を取得していなければなりません。販売承認は安全、有効、高品質であることが証明された医薬品にのみ与えられます。
製薬会社が新しい医薬品を販売するために認可の取得を目指す場合は、関連規制当局に医薬品販売承認申請 (MAA) を提出する必要があります。
医薬品規制に関する規則の設定
販売承認の取得に関する規則は、欧州および国家レベルでさまざまな法的文書に記載されています。
- 規制や指令
- ガイドライン
規制や指令
EU の規制や指令は欧州委員会によって提示され、審査と必要に応じた修正を経たうえで、欧州理事会および欧州議会により共同で採択されます。
規制は採択されると、すべての加盟国 (MS) の法律に直接適用されるようになります。
指令は EU 加盟国に対する指示です。指令の要件は各加盟国の国内法に導入される必要があります。
すべての規制および指令は、Eudralex の欧州委員会ウェブサイトで確認できます。http://ec.europa.eu/health/documents/eudralex/vol-1/index_en.htm
ガイドライン
規制や国内法は必ずしも詳細なものとは限りません。EU 全土における法律の理解とその均一な適用を促すため、規制面および科学面で多数のガイドラインが採用されています。こうしたガイドラインは業界と規制当局の両者に対し、特定の状況で具体的にどうすべきかについて、より詳細な情報を提供しています。
ガイドラインの草稿は、オープンな協議が行われるよう、最終版が欧州医薬品庁 (EMA) のヒト用医薬品委員会 (CHMP) または欧州委員会、あるいはその両者によって採択される前に公表されます。http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/regulation/general/general_content_000043.jsp&mid=WC0b01ac05800240cb
製薬会社が医薬品販売承認申請のための文書を提出すると、規制当局はその会社が関連ガイドラインに準拠しているかどうかの評価を行います。ガイドラインからの逸脱は、信頼できる科学的正当性がある場合のみ認められます。
販売承認のための医薬品の評価
規制当局は製薬会社から提出された文書を確認し、医薬品が以下の基準を満たすことが十分に示されているかどうかを評価します。
- 品質
- 安全性
- 有効性
この文書は、その医薬品を投与することのベネフィットがリスクを上回ること (肯定的なベネフィット・リスク比) も示さなければなりません。
品質
医薬品に含まれる活性物質は、高品質でなければなりません。製薬会社は活性物質の製造方法を説明する必要があります。また活性物質に含まれるあらゆる不純物の性質および量と、そうした量をどのように管理しているかも記載する必要があります。
製薬会社は最終的な医薬品の製造方法と、優れた品質を確保するために使用しているあらゆるテスト手順についても説明する必要があります。
安全性
製薬会社は医薬品を開発する際、活性物質および最終的な医薬品が安全であることを示さなければなりません。医薬品はまず動物でテストされ (非臨床安全性試験)、その後ヒトでのテストが行われます (臨床試験)。
製薬会社はあらゆる潜在的なまたは観察された有害反応に関するすべての情報を収集する必要があります。
有効性
治験の結果は、その医薬品が目的の効果を有していると示すものでなければなりません。
ベネフィットとリスクの評価
規制当局の最も重要な仕事は、医薬品のベネフィットとリスクのバランスを評価することです。医薬品は完全に安全ということはありえません。つまり規制当局は、医薬品を認可する前に次のような事項を検討する必要があります。
- その医薬品のよい効果にはどのようなものがあるか。たとえば、疾患に対する治療効果はどのようなものか。
- その医薬品の有害な効果にはどのようなものがあるか。たとえば、なんらかの有害反応はあるか。
- その医薬品を投与することのベネフィットは、それに伴うリスクを上回るか。
ベネフィットとリスクの評価は単純ではありません。その医薬品によって引き起こされるあらゆる副作用を慎重に検討し、それらが許容可能であることを確認しなければなりません。これは疾患の重篤性など、さまざまな要素に依存します。
- 医薬品が軽度の痛みの治療を目的としている場合は、いくつかの軽度の副作用しか認められません。
- 医薬品がまだ治療法の存在しない重篤ながんを治療するものである場合は、非常に重い副作用も許容される可能性があります。これは生活の質の向上や延命効果によって得られるベネフィットが、医薬品の投与によって引き起こされるリスクを上回る可能性があるからです。
患者の参画
患者は新薬の承認における重要な利害関係者です。実際にその医薬品を使用するのは患者だからです。
欧州レベルでは欧州医薬品庁 (EMA) が、患者が規制プロセスに関与する数多くのシナリオを示しています。
患者団体からは、EMA の管理委員会に 2 名が参加しています。また 7 つの科学委員会のうち以下の 4 つにも、正式な委員を出しています。
- オーファン医薬品委員会 (COMP)
- 先進医療委員会 (CAT)
- 小児委員会 (PDCO)
- ファーマコビジランス リスク評価委員会 (PRAC)
さらに、中央審査方式 (CP) を利用して提出された医薬品販売承認申請の評価に責任を持つヒト用医薬品委員会 (CHMP) は、必要に応じて個々のケースで患者団体と協議することになっています。
2006 年に設立された EMA の患者・消費者ワーキング パーティー (PCWP) により、欧州医薬品庁は患者および消費者との既存の関係をさらに強化することができました。PCWP は EMA およびその人間科学委員会に対し、医薬品に関連するあらゆる問題についての推奨事項を提示しています。
References
European Medicines Agency (2019). Mandate, objectives and composition of the Patients and Consumers Working Party (PCWP) Retrieved 31 July, 2021, from http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Other/2010/02/WC500073497.pdf