偽造医薬品

Last update: 22 11月 2016

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はじめに

2011 年以降、欧州議会の発表によると、低品質または偽造成分を含む医薬品や、無成分または誤った用量 (多すぎるまたは少なすぎる) の医薬品が驚くほど増加し、公衆衛生や患者の安全性を脅かしているとしています。EMA の定義によると、偽造医薬品とは

「承認された本物の医薬品と偽る医薬品」のことです。 (1)

偽造医薬品の定義を導入したのは、違法の医薬品、いわゆる偽造薬 (知的所有権を遵守していない、商標法を侵害している医薬品) と区別し、各問題に対応する戦略を特定しやすくするために必要でした。

偽装医薬品は、EU 承認手続きに必要となる、規制当局による通常の品質や安全性、有効性評価を受けていません。このため、偽装医薬品を服用した結果、重篤な状態や以下を引き起こすおそれがあります。

  • 未治療の疾患または医学的治療の失敗。
  • 患者が既に定期的に服用している医薬品との予期せぬ危険な相互作用。
  • 重大な副作用。

偽造医薬品の種類

偽造医薬品は、単独の種類の医薬品や、標的の集団や地域に限定されません。例えば:

  • 途上国では、抗生物質、抗結核薬、抗マラリア薬、HIV に使用する抗レトロウイルス薬といった 「必須」 (救命的になり得る、または基本的な医療サービス提供に欠かせない)、かつ 「最初に必要な」 (集団の医療ニーズを最優先で満たす) 医薬品を偽装する兆候があります。鎮痛薬、抗炎症薬、血液製剤などの製品も偽装の場合があります。
  • 米国と同様に欧州の裕福な国でも、偽装医薬品は特にオンラインで急増しています。

保険制度によって返金されない製品が、偽造の主要な標的であり、性機能不全に対する医薬品や体重減少を促進する医薬品などがそうです。

偽造医薬品に対する欧州の規制

偽造医薬品による脅威への取り組みには、いくつかの世界的な機関や団体が関与しています。重要な機関の一部には、世界保健機関 (WHO)、インターポール、世界税関機構、医薬品庁長官 / 執行官ワーキンググループ (HMA/WGEO) があります。いずれも偽造医薬品の供給を防止するための業務を調整し、情報を共有しています。

ヒト用偽造医薬品指令 2011/62/EU (3) では、医薬品配布の枠組みを提示し、免許を持つ薬局や認可を受けたインターネットプロバイダーを含めた小売業者を通じてのみ販売提供されています。

この指令では、偽造医薬品の合法的なサプライチェーン (製造業者から販売業者、薬局、病院まで) への流入や、欧州全体で4 種類の主な対策を用い患者への到達を防止する、安全機能を導入しました。

  1. 医薬品の安全機能

多くの医薬品には、2 点の安全機能が包装に施されています。二次元バーコードまたは 有の識別子 改ざん防止デバイスです。この規制は 2016 年 2 月、欧州委員会により (4)販売承認所有者に向けて、 2019 年 2 月までに、これらの機能を大部分の処方医薬品と一部の一般用医薬品の包装に添付することが発表されました。こうした安全機能は患者と業界のベネフィットのため医薬品の信頼性を保証し、医薬品サプライチェーンのセキュリティを強化するねらいがあります。

  1. サプライチェーンと 医薬品の適正流通基準

指令は、品質体系、人材育成や衛生管理、施設や装備、文書やその他の規制を含めた卸売業者の新たな責任を導入しています。

  1. EU 外で製造された物質

2013 年 7 月以降、EU 外で製造された活性物質にはすべて、輸入時に輸出国の規制当局による確認書を添付することになり、多くの国がこれを行うことを公約しています。こうした文書は製造施設ごとや活性物質ごとに発行され、医薬品の製造管理および品質管理の基準 (GMP) を遵守し、EU の規制と同等であることを確認します。

  1. インターネットでの販売

指令では、EU 内で合法的に運営されているオンライン薬局や、認可された小売業者のウェブサイトに表示される義務化されたロゴが導入されています (5) 。

偽造医薬品のリスク

WHO の推定によれば、インターネットで販売されている医薬品の半数以上が偽造品です。欧州では、オンライン薬局の 97% が違法です。医薬品のネット購入は年々増加しているのは、次のようなさまざまな理由により消費者に魅力的に見えるからと考えられます。

  • 購入時間の短縮。
  • 安価な医薬品。
  • 処方医薬品を入手するのに事前の診察を避ける。

偽造医薬品の患者へのリスクは数多くあります。

  • 偽造医薬品には、偽のまたは誤った成分、有効でない医薬品の成分が含まれている可能性があります。危険物質を含有していることさえあります。誤った量の成分が含まれていたり、有効成分が弱すぎたり強すぎたり、あるいは期限を過ぎている場合もあります。
  • 偽造医薬品は患者の疾患を治療せずに、症状を悪化させる、または障害を引き起こすどころか死亡させる可能性もあります。合法的な治療 (抗生物質や抗寄生虫薬) への耐性を高め、薬物有害反応/副作用のリスクも増大させる可能性があります。
  • 偽造医薬品は他の医薬品と併用すると安全ではない可能性があります。
  • 偽造医薬品は正しくラベル表示がされていない可能性があり、成分の劣化を招く不適切な温度や湿度で保存、出荷されているかもしれません。

患者が信頼のおける情報源を認識し、違法なインターネット販売のリスクに気付くことが大切です。ウェブサイトやキャンペーンでの共通のロゴに関する情報を通じて、偽造医薬品のリスクに気付くべきです。患者団体は国民意識を高める運動を支援するために、患者に情報を提供し医薬品の安全性を促進することで、認識を高めることができます。

医師や医療関係者が偽造医薬品の問題やリスク認識を高めることを支援するために、強力な患者と医療従事者の関係を構築するべきです。

オンラインで安全に医薬品を購入

EU 諸国の一部では、医薬品のオンライン購入が可能です。インターネットでの医薬品の購入は簡単で便利です。しかし、安全でなければなりません。

患者は医薬品の購入を EU 加盟国の国家管轄当局に登録しているオンライン販売業者からのみにすべきです。

 

図 1: 義務のロゴ (英国版) は、EU の全てのオンライン医薬品販売業者のウェブサイトに表示されなければなりません (6) 。

ロゴは、患者や消費者が、許可を受け承認された医薬品を提供しているオンライン薬局や小売業者だと識別できるようにすることを目的としています。EU 各国で閲覧可能なオンラインレジストリーで、こうしたオンライン薬局や小売業者を確認することが重要です。レジストリーの一覧を欧州医薬品庁のウェブサイトで見ることができます。https://www.ema.europa.eu/en/human-regulatory-overview/public-health-threats/falsified-medicines-overview/buying-medicines-online#ema-inpage-item-10478 (4 July 2021)

小売業者がそのリストに記載されていない場合は、購入を続けるべきではありません。

医療従事者のみならず患者も偽造医薬品の発見と報告という非常に重要な役割を担っています。患者にアクセス可能で正確な情報を提供することが、混乱を避けるために非常に重要です。

参照文献

  1. https://www.ema.europa.eu/en/human-regulatory-overview/public-health-threats/falsified-medicines-overview/buying-medicines-online#ema-inpage-item-10478 (4 July 2021)
  2. https://www.interpol.int/News-and-Events/News/2013/INTERPOL-and-pharmaceutical-industry-launch-global-initiative-to-combat-fake-medicines (4 July 2021)
  3. Directive 2011/62/EU on falsified medicines https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2011/62/oj (4 July 2021)
  4. European Commission Delegated Regulation 2016/161 https://ec.europa.eu/health/sites/default/files/files/eudralex/vol-1/reg_2016_161/reg_2016_161_en.pdf (4 July 2021)
  5. Buying medicines online (4 July 2021)
  6. Technical guidance in using the obligatory logo https://ec.europa.eu/health/human-use/eu-logo and https://ec.europa.eu/health/sites/default/files/files/eu-logo/logosancointernet_charte_v2.pdf (4 July 2021)

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