Matthew May 氏へのインタビュー

Last update: 24 7月 2023

台本

Matthew May と申します。製薬業界の非営利団体である DIA に勤務しています。DIA は世界中の会員が加盟している団体で、会議やトレーニングを開催するとともに、医薬品開発のさまざまな領域でのグローバルな舞台で考え抜かれたリーダーシップの提供に積極的に取り組んでいます。バーゼルにある「ヨーロッパ、中東、アフリカ局」でプロジェクト マネージャーとして、EUPATI (革新的治療のための欧州患者アカデミー) 専任で、EUPATI プロジェクト内のあらゆるコンテンツ開発と教育教材関連の制作のコーディネーションを担当しています。18 ヶ月間の e-ラーニングと対面式での患者エキスパート トレーニング コース、およびウェブサイト上のツールボックスの両方に携わっています。ツールボックスは、現在 7 カ国語で提供されている (今後対応言語数はおそらく増えるでしょう)、統合されたワンストップの情報源で、一般の人々だけでなく患者の権利擁護者や代表者にも医薬品開発に関する情報を提供しています。

EUPATI での勤務を開始したのは 2012 年です。プロジェクトの開始から数ヶ月後の時点で、はっきりと立場の異なる数多くの利害関係者グループがプロジェクトに関わっていました。私たちは各々がどこから来ているか、つまりどの利害関係者グループに所属しているか、患者団体のために動いているのか、業界にパートナーを持つ学術組織に所属しているのか、アドバイザーの立場にあるのか、規制当局、HTA、あるいは他の非営利団体に所属しているかがはっきりとわかりました。

プロジェクトが進むにつれ、徐々にこれらの境界が少しずつ曖昧になってきました。私たち全員が、非常に専門的な分野を持つこともわかってきました。私自身はトレーニングを受けた化学者で、短期間、ラボで創薬と薬物送達システムに携わりました。私たちが学生に教えたいと望んでいたことを、コースの受講者の皆さんを対象に指導するようになりました。私たちはジェネラリストとなったのです。ともに業務に携わり、お互いの異なる専門分野について学ぶにつれ、徐々にその知識をプロジェクト全体にもたらすようになり、統合された経験をレッスン、学習モジュール、記事やプレゼンテーションとして取り込むためにともに取り組むようになりました。この編集プロセスとコンテンツ作成プロセスを実施する中で、私たち全員が教育を受けた専門家としてさらにジェネラリストになるというベネフィットを実際に受けたと思います。これは現在、私たちに業務の進め方について異なる視点を与えてくれています。

さらに、これらのチームが異なる業務パッケージや、プロジェクトの異なる業務パッケージ内の小委員会を立ち上げていくにつれ、各自が実際には自分の所属する会社を代表しているのではなく (私の場合は私が所属する組織ですが)、利害関係者グループ全体の見解を代表するようになっていきました。私自身は、EUPATI 編集委員会のメンバーです。私たちのコンテンツはすべて公開されるため、私たちは一般に公開されるコンテンツ、つまりすべてのコンテンツをレビューしています。私は委員会では医薬品製造方法について知識がある人物として自分自身を代表するだけでなく、NGO 利害関係者グループも代表しています。編集委員会での私の同僚は、一つの製薬会社を代表しているだけでなく、製薬業界全体の意向と視点、または患者コミュニティ全体、あるいは学会全体を代表するでしょう。

また、このようなプロジェクトにおいて必要なカギの 1 つは、いかなる方向へのバイアスなしに、あらゆる視点を確実に検討するため、私たちがいかに中立的で透明性を保っているかという事実です。これはユニークなポイントだと思います。

DIA では、患者の参加にどのように関与してきましたか。

DIA のオフィスでは、私の EUPATI での経験のひろがりと業務ゆえに大勢の人々や組織を知るようになり、コミュニティ、患者の権利擁護者のコミュニティ内で重要なことを理解するようになりました。過去数年間にわたって、ヨーロッパ、中東およびアフリカ局ですべての患者の活動を担当してきました。DIA では、過去10 年間、医薬品開発の中心に患者が確実に留まることを目的として、数多くの活動を完了し、現在も数多くの活動に従事しています。ヨーロッパ局では、10 年以上にわたって当団体の最大の会合にフェローシップを提供し、患者の権利擁護者、患者代表の出席を後援することで、彼らが出席する基盤と手段を持ち、関係する利害関係者とのネットワークを確実に築くことができただけでなく、あらゆる議論と将来的な協力関係を促進する場に、まったく異なる視点をもたらしています。

このプログラムは、北米局の同僚によっても同様に実施され、現在は DIA の年次会議の中核部分を確実に占めるようになっています。このプログラムは、10 年以上にわたって、単に現状維持していたわけではありません。時間の経過とともに徐々に進化し、医薬品開発に変化をもたらしました。たとえば、現在ヨーロッパでは、患者は当団体の会合に参加者として出席するだけではなく、会議では他の利害関係者と同等であり、スピーカーおよびパネリストとして私たちのプログラムの一部でシステム的に関与しています。私たちは、他の多くの会合でも同じことを継続していきます。

DIA は、多岐にわたる分野を専門とし、さまざまな利害関係者に所属するメンバーから構成される、専門家の会員制による団体です。そして、この会員制の団体の一部となるべき重要な利害関係者の一つが、患者コミュニティであると認識しています。DIA は、個人の専門領域にもとづくさまざまなコミュニティをベースに運営されており、人々が地域、企業、職務間で情報を交換し、ガイダンス、革新、コラボレーションを推し進め、お互いのアイデアの背景を理解することを可能にしています。

患者コミュニティは、他のコミュニティと常に少し異なります。それは、もちろん、専門家の患者という概念が比較的新しいものであり、必ずしも患者が活動する方法ではないからです。専門家の会員制団体であるため、患者コミュニティが常にうまく適合したわけではありませんでした。あらゆるものが進化するように、もちろん私たちはこれをうまく変化させ、現在では、患者が DIA の会員となる特別なプログラムが用意されてます。このプログラムに興味のある方は、会員になる方法について当団体にご連絡ください。当団体では、オンラインのプラットフォームと会合で患者同士が話し合える場も設けています。このアイデアは、実際の EUPATI での経験にもとづいています。つまり、さまざま疾患領域の人々が世界のさまざまなエリアからの集まり、アイデアを共有し、1 つの意見や見解を実際に形成して他の人々やさまざまな利害関係者グループに所属する人々と協力するというものです。

最近、当団体が手掛けた別の領域についてですが、ここでは「最近」という言葉を使いたくありません。なぜなら、既に長年にわたって起きていることだからです。当団体の諮問グループ、委員会レベル、地域の諮問レベルには患者コミュニティに所属する人々が関わっています。また、当団体の会合のプログラム委員会には、患者が体系的に組み入れられています。つまり、プログラム委員会のメンバーが、プログラム委員会の残りのメンバーに対して、プログラムの中で患者が声をあげるのに最も価値のある部分はどこかについての洞察を提供し、その洞察が会合の出席者全員に本当の意味でインパクトを与え、想像をかきたて、ニーズを捉えるのに役立っています。

時間の経過とともに、DIA の業務はどのように変化しましたか。

過去10年間で、私たちは考え抜かれたリーダーシップをより発揮するようになりました。つまり、会員制の団体である強みを活かし、世界中のさまざまな利害関係者に関与する者として、医薬品開発のあり方を変えていくために知識や洞察をとりまとめました。患者の権利擁護、患者の利害、患者の関与の領域では、数多くのさまざまなコラボレーションを進めています。たとえば、Clinical Trials Transformation Initiative (治験改革イニシアティブ) と協力しています。

Patient Centered Outcomes Research Institute (患者中心のアウトカム研究所) とワークショップを共催し、最近では、昨年 Tufts Center for Studies on Drug Development (タフツ大学医薬品開発研究センター) と、製薬会社が患者の権利擁護者および患者代表とともに活動する場合、その関与からどのようなリターンが生じるかを調査する共同プロジェクトを開始しました。ここでのアイデアは、長年にわたり医薬品開発において患者が重要な役割を果たしていることを、私たちが現在では認識しているということです。そこから常に出される疑問は、「医薬品開発のさまざまな段階での患者の関与による実際のインパクトを示す定量的データはあるか。」というものです。私たちがタフツ大学と実施している研究は、この疑問への取り組みを開始しました。

この研究の結果が、最近 DIA ウェブサイトで公開されました。こちらの研究結果とともに、私たちが取り組んでいる他の領域についてもご覧いただけます。たとえば、当団体では実際の患者の関与から生じるリターンを測定するために、人々が利用可能なある指標を最終的に定義できるよう研究を続けてきました。そして、開発された指標を使用して、提出された特定のケーススタディをレトロスペクティブにみていきます。もちろん指標は、関与活動の一部として利用できる手段を明らかにするため、今後プロスペクティブにも使用することができます。おそらく将来的には、ケーススタディの数が増えるにしたがい、既にレトロスペクティブな研究が行われている別の領域もさらにみることができるでしょう。

DIA の洞察および DIA の考え抜かれたリーダーシップは、利害関係者が現行の作業方法の向上、製薬のあり方を進展、節約、そして患者の関与によって生じるリターンを認識できるようになるために必要なツールと知識を提供しています。

さまざまな利害関係者間の協力によってのみ、協力のために互いの帰属先を理解し、互いの関与が適切であること、および私たちが真に医薬品の革新の前進を可能にできることを知り、最終的には世界中の誰もが必要とする医薬品を確実に手に入れることができます。

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