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販売承認

はじめに

すべての医薬品について、欧州経済領域 (EEA) で合法的に市販するには医薬品販売承認 (MA) が必要です。1 医薬品販売承認の根本的な目的は、安全で効果のある、高品質の医薬品を EEA 全体の市民が迅速に入手できるようにすることです。医療機器が市場で入手可能になる前に、他の医薬品とは異なるプロセスを踏む必要性について、認識することが重要です。

各国の所轄官庁 (National Competent Authority: NCA) は、略して「規制当局」と呼ばれ、医薬品販売承認申請 (MAA) の評価と販売承認の医薬品への付与を担う国の政府機関です。これらの医薬品は、加盟国別審査、分散審査方式、相互承認手続きを経て、加盟国内の市場に投入されます。ロンドンにある欧州医薬品庁 (EMA) は、中央審査方式 (CP) に基づき、医薬品の欧州販売承認申請の科学的評価に関わる調整を担います。評価は各国の所轄官庁の専門家によって実施されます。肯定的な評価が得られた後、欧州委員会によって販売承認が発行されます。

医薬品販売承認の手続き

販売承認を取得する方法は、中央審査方式 (CP) または中央審査方式ではない手続きの 2 通りあります。後者には、分散審査方式 (DCP)、相互承認手続き (MRP)、および加盟国別審査が含まれます。各システムでは独自の法規定を持ち、所轄官庁 (EMA または NCA) や販売承認保有者を管轄します。

中央審査方式 (CP)

ほとんどの新薬について、この方式を使用します。企業は EMA に 1 件の申請を提出します。EMA ヒト用医薬品委員会 (CHMP) – EU 加盟国および EEA 加盟国のそれぞれから任命された 1 名と、5 名の専門科学者から構成され、医薬品が承認されるべきかどうかを欧州委員会に提案します。医薬品がこの方法で承認された場合、EU と EEA の全加盟国で医薬品販売の認可が下ります。この科学的評価の過程は、最大 210 実働日数 (審査側持ち時間) までかかりますが、この時間は一時停止することが可能です (「clock stop (申請者側持ち時間)」と呼ばれます)。

分散審査方式 (DCP) および相互認証手続き (MRP)

これらの手続きでは、販売承認は数か国の加盟国に同時に適用されます。そのうち 1 か国が参照加盟国 (RMS) として先導を務めます。成功を収めた場合、医薬品の販売は、RMS とその他の関与した国々 (関係加盟国 (CMS)) において認可されます。この手続きでは、RMS が行った評価を CMS で承認する原則に基づいています。ジェネリック医薬品のほとんどは DCP を通じて承認されています。

加盟国別審査

独立した加盟国別審査は、1 国のみの加盟国 (MS) で承認および販売される医薬品に厳密に制限されています。現在では新しい製品にこの手続きを使用することはまれです。

医薬品販売承認の手続きの選択

製薬会社は通常、使用する手続きを自由に決めることができます。これは、特定の手続きを選択するさまざまな理由を含むことがある事業決定です。以下については中央審査方式 (CP) の使用が義務付けられています。

  • バイオプロセス由来の製品、
  • 先端医療医薬品 (遺伝子治療、体細胞治療、再生医療製品など)、
  • 希少疾病用医薬品 (オーファン医薬品)、
  • HIV または AIDS、神経変性障害、自己免疫障害、その他の免疫障害、ウイルス疾患、糖尿病の治療を目的とした医薬品。

CP は有意な治療効果のある医薬品、科学的または技術的に革新的な医薬品、減量用薬などの公衆衛生の利益のある医薬品などにも使用できます。

製薬会社が販売承認のある既存の医薬品を別の適応用に開発する場合、通常、完全に新規の医薬品販売承認を申請する必要があります。

医薬品の科学的評価

手続きの種類に関わらず、各医薬品には販売承認評価用の標準の「dossier (申請書類)」が必要です。コモン テクニカル ドキュメント (CTD) は、規制当局への提出を目的とした申請書に対して従う必要のある国際的に認定および共通化されたフォーマットです。CTD は、医薬品が必要な品質を備えていること、医薬品が安全で効果があることを申請者が示す必要がある文書一式から構成されています。

医薬品販売承認申請の拒否

医薬品が以下の状況の場合には、医薬品販売承認 (MA) が拒否されます。

  • ベネフィット リスク バランスが好ましいとみなされない場合、
  • 治療効果が申請者によって十分に実証されていない場合、または
  • 定性的および定量的組成が宣言されたとおりではない場合。

医薬品販売承認申請の妥当性と追跡

承認する加盟国の所管官庁によるベネフィット リスク バランスの再評価に基づき、MA は 5 年後に更新されます。更新された後は、医薬品安全性監視に関連する正当な理由で所轄官庁が追加の 5 年間の更新をもう 1 度続行することを決定しない限り、MA は無期限に有効になります。

すべての医薬品市販承認取得者 (MAH) は、安全性追跡データを提供し、他の市販後の要求事項に従うことを求められます。医薬品については、市販後、継続的にモニタリングし (医薬品安全性監視)、医薬品の安全性プロファイルに影響する可能性があるいかなる側面も検出および評価し、必要な措置を取る必要があります。

市場での販売中に、医薬品の有効性、安全性、または製造に関する新しいデータまたは情報が入手可能になる場合があります。この場合、以前承認を受けた医薬品を持つすべての加盟国の各所轄官庁に有効な販売承認の「変更」申請を送信するのは、医薬品市販承認取得者 (MAH) の責任となります。

販売承認への患者の参加

販売承認への患者の参加は、従来から極めて限定的です。しかし、一部の所轄官庁では、患者協議や英国の医薬品・医療製品規制庁 (MHRA) 内のヒト医薬品審議会の代表などを通じ、医薬品販売承認の手続きに患者の参加を得る方法を検討しています。EMA では、科学的助言や治験実施計画書の支援手順、科学諮問グループ (SAG) ミーティングへの参加を通じ、患者は既に医薬品安全性監視リスク評価委員会 (PRAC) の一員としてベネフィット リスクの議論に参加しています。CHMP には、意思決定に先立つ口頭説明中に患者が関与するパイロット イニシアチブもあります。

患者活動家団体も国や EU の法規に影響を及ぼす機会を得ています。

参照文献

  1. 欧州経済領域 (EEA) は EU 加盟国および 3 つの EEA EFTA 加盟国 (アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー) を統合し、同じ基本ルールによって統制される域内市場を形成しています。これらのルールは、商品、サービス、資本、人員が EEA のオープンな競合環境の中を自由に移動できるようにすることを目的としており、この概念は "4 つの自由" と呼ばれています。

添付文書

A2-5.07-v1.1