薬理学の主な原則

はじめに

薬理学は、医薬品の作用機序、生体反応、および経時変化に関する学問です。非臨床薬理試験により、科学者が医薬品の薬効と副作用 (毒性) を比較することが可能になります。医薬品の臨床試験 (ヒトが対象) に進む前に詳細なベネフィット – リスク解析を実施できるため、この比較は重要です。医薬品が臨床段階に進んだ場合、非臨床薬理試験および毒性試験で収集したデータは、最初の臨床試験 (ファースト イン ヒューマン) でボランティアに投与する医薬品の用量を決定する際に役立ちます。

薬理学は、主に 2 つの分野に分かれています。薬物動態と薬力学以下でより詳細に説明します。

薬物動態

薬物動態 (PK) は、生体が医薬品に与える影響に関する学問です。

薬物動態に関連するどの教科書にも、ADME という頭字語が記載されています。

A (吸収): 医薬品が体内に吸収される機序
D (分布): 医薬品が体内で移行する箇所
M (代謝): 生体により医薬品が化学的に修飾される機序
E (排泄): 生体が医薬品を排出する機序

薬物動態試験において収集されたデータにより、体内での医薬品の経時的変化に関する情報が提供されます。この情報に基づく科学的モデルおよび数理モデルは、体内における医薬品の移行と代謝に関する理解と予測に役立ちます。これにより、科学者が医薬品の薬効と副作用との関係を評価し、ヒトにおける医薬品の安全性/忍容性を予測することが可能になります。したがって、薬物動態試験の際に収集したデータは、臨床試験での投与スケジュールの決定に不可欠です。

薬力学

薬力学 (PD) は、医薬品が生体に与える影響に関する学問です。

医薬品が生体に影響を与えうる機序は 2 通りです。

  • 医薬品が体内で疾病に与えうる影響、または
  • 医薬品により起こりうる、体内の特定箇所における細胞レベルまたは細胞内での相互作用

薬力学試験の主な目的は、医薬品が生体に影響を与える機序 (たとえば、医薬品が活性化する受容体) に関する情報の収集です。これにより、科学者は医薬品の有効性、すなわち、医薬品が標的に対する所定の効果を有するか、そして有する場合の薬効の強さを評価することができます。また、医薬品の体内濃度と薬効の強さとの関係をより良く理解することが可能になります。

薬力学試験は、医薬品の安全性評価に欠かすことができません。これにより、医薬品が有するあらゆる副作用が特定され、医薬品の生体に対する所定の薬効が生じる用量範囲 (薬効用量域) が探索されます。

添付文書

A2-3.06-v1.4