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臨床試験への登録

はじめに

臨床試験に登録する前に、参加者を募集してスクリーニングし、同意書の提出を依頼する必要があります。臨床試験への登録プロセスは、参加者を保護し臨床試験そのものの妥当性を確保するために厳しく規制されています。以下の項目では、患者さんに臨床試験についてどのように説明するか、スクリーニング プロセス、同意書の構成と要件について解説しています。

臨床試験の広告と参加者募集

参加者に対する臨床試験についての説明方法

臨床試験の広告に使用される手段は、法律により規制されています。広告のほか、臨床試験事務局は患者団体、患者レジストリ、病院、薬局などに提供する情報を通じて参加希望者を探します。また、参加者は臨床試験に関する情報を臨床試験レジストリで検索できます。患者さんは主治医から情報を得ることができます。

近年では、病院内のポスターなどの従来型の印刷広告に加えてデジタル ツールの使用が広まってきました。新しいデジタル ツールは、臨床試験募集専用サイト (たとえば、欧州臨床試験データベース (EUCTR)) からソーシャル メディア サイトまで、多岐にわたります。

臨床試験を目的とした患者さんの募集に使用される情報

臨床試験参加希望者への案内に使用される経路を問わず、倫理委員会が適切なガイドラインに従って良好な意見を提示している必要があります。

広告を通じて患者さんを募集するために使用される方法はさまざまですが、すべての広告は以下の要件を満たす必要があります。

  • 臨床試験を実施する組織への連絡先詳細を含む
  • 試験対象の疾病と臨床試験の目的を明記する
  • 参加者による臨床試験への参加の可否を決定する選択基準および除外基準の概要を説明する
  • ベネフィット (たとえば、定期的な健康診断) の詳細を説明する
  • 臨床試験終了までに要する時間について説明する
  • 患者さんの募集をサポートする患者団体について説明する (利用可能な場合)。

一方、広告において以下の行為は認められません。

  • 良好な結果または病気の治癒を約束する
  • 特に、学習障害を有する者など社会的弱者を臨床試験で募集しようとしている場合に、参加を強制する
  • 試験対象の薬剤が安全である、または効果があると明記する

スクリーニング プロセスと臨床試験への登録

正式な臨床試験への登録前に、参加に興味がある患者さんはスクリーニング プロセスを受けます。年齢、性別、疾病の種類やステージなどの選択基準および除外基準と前治療歴は、患者さんの適格性 – 臨床試験への参加の可否 – を判断するのに役立ちます。初期要件を満たす患者さんに対しては、予約をしてさらなるスクリーニングを受けるように依頼します。

スクリーニング プロセスで患者さんが選択基準を満たすと判断されると、患者さんは対面で説明を受け、臨床試験に対するより多くの情報が提供されてインフォームド コンセントへの署名が求められます。インフォームド コンセント プロセスは、患者さんが臨床試験に参加している間、患者さんの保護に大きく貢献します。

インフォームド コンセント

インフォームド コンセント プロセスの間、臨床試験依頼者の代理の者が参加希望者と臨床試験のすべての要素について話し合います。この際、参加するか決定する前に、参加者は臨床試験の目的と潜在的なベネフィットやリスクを学びます。

インフォームド コンセントの構成

インフォームド コンセントの話し合い、書面による同意書、その他患者さんに書面で提供される情報においては、医薬品の臨床試験の実施の基準 (GCP) に準拠した説明を行う必要があります。1

EMA ガイドラインによると、参加希望者に提供する情報には以下の項目を含める必要があります。

  • 臨床試験の研究的側面
  • 臨床試験の目的
  • 臨床試験における治療内容と各治療にランダムに割り当てられる確率
  • すべての侵襲性手技を含む、従うべき臨床試験の手順
  • 参加者の責務
  • 臨床試験の実験的側面
  • 参加者や、該当する場合は胎芽、胎児、または乳児に与える合理的に予測可能なリスクやデメリット
  • 合理的に予測可能なベネフィット。参加者にとって想定される臨床的ベネフィットが存在しない場合、そのことを通知する必要があります。
  • 患者さんが利用可能な代替治療の手順またはコース、およびその重要な潜在的ベネフィットとリスク
  • 臨床試験に関連する健康被害が生じた場合に患者さんが受けられる補償または治療
  • もしあれば、臨床試験に参加している患者さんに対して支払われる負担軽減費用の予想額
  • もしあれば、臨床試験に参加している患者さんが負担する支出の予想額

また、参加希望者に対して以下の事項を通知する必要があります。

  • 臨床試験への参加は自主的なものであり、不利な扱いや与えられるはずであったベネフィットの喪失を伴うことなく、いつでも臨床試験への参加を拒否したり、中止したりすることができます。
  • モニター、監査者、倫理委員会、および規制当局は、参加者の情報に関する守秘義務を破ることなく、適用可能な法規制が許す限り、臨床試験における治療内容および/またはデータを検証するため、参加者の原医療記録に直接アクセスする権限があります。また、同意説明文書に署名することにより、参加者や参加者の法定代理人はこのようなアクセスを許可します。
  • 参加者の特定につながる記録は機密情報として扱われ、適用される法規制による制限があり、公開されることはありません。臨床試験の結果が公開される場合、参加者の識別情報は機密のまま扱われます。
  • 臨床試験への参加継続の意思に影響を与える可能性がある情報が得られた場合、参加者または参加者の法定代理人に通知されます。
  • 参加者の権利についてさらなる情報を取得するための連絡先詳細、および臨床試験に関連する健康被害が発現した場合の連絡先
  • 参加者が臨床試験への参加を中止する予測可能な状況または理由
  • 臨床試験の予想期間とおおよその参加者数

インフォームド コンセントに関する詳細な情報については、以下に添付したファクトシートを参照してください。

患者の参画

患者団体および患者の代表者は、インフォームド コンセント プロセスに参画できます。特に同意書の作成にあたり、以下の事項を保証するためにアドバイスを与えることができます。

  • 全体的に理解が容易で、専門用語や科学用語を使用せずに書かれている
  • 言葉巧みな表現が含まれていない
  • 臨床試験への参加は、完全に自らの意思に基づくことが説明されている
  • 生じうる不利益と参加のリスクについて公正な観点から説明されている
  • 直接的な個人のベネフィットや、疾病に対する理解が深まることを含む、臨床試験により得られるその他の有益な結果に関する概要が説明されている

より広範に、患者団体は臨床試験に以下の事項を通じて参加できます。

  • 患者さんや一般の方々に研究のさまざまな段階で参加を促し、研究者や医療従事者 (医師、看護師) と協力する
  • 臨床研究のデザイン、マネジメント、サポートを行うためアイデアを提供する
  • 臨床研究者と一般の方々との協力関係を促進する
  • 受け身の参加者としてではなく、研究プロセスに積極的に参画する
  • 臨床研究が適切、有益で患者に利益をもたらすことを確認する
  • インフォームド コンセント プロセスで参加者と研究チームをサポートする

参照文献

  1. European Medicines Agency (2002).Note for Guidance on Good Clinical Practice (CPMP/ICH/135/95).London:EMEA.Retrieved 12.08.2015 from http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2009/09/WC500002874.pdf

添付文書

A2-4.17-V1.1