治験の値の評価

はじめに

すべての治験が同じというわけではありません。治験結果をどの程度重視するかを判断するには、以下のようないくつかの重要な質問をすることが有効です。

治験のデザインはどの程度よくできていたか

治験に唯一の正しいデザインがあるわけではありません。使用したデザインが状況に適していたかどうかという問題です。大規模な試験は小規模な試験よりも一般的に信頼性が高くなりますが、このことは常識で判断される必要があります。たとえば、心臓発作医薬品の試験でしばしば見られるように、希少な遺伝性酵素欠乏症の試験に 5,000 人の患者を集めることは決してできません。同様に、数週間の追跡調査は肺炎の試験では十分以上の調査ですが、避妊剤の場合は十分ではありません。プラセボ対照群は結果の解釈に非常に役立ちますが、一部の状況 (効果的治療が存在する命に関わる疾患など) では明らかに非倫理的になります。比較試験は有効性を評価する最善の方法ですが、より大規模でより期間の長いオープンラベル試験によって実社会での医薬品の安全性に対する知見をより多く得られることもあります。

各試験デザインは以下の質問でアプローチする必要があります。すなわち “この状況における最善の方法だっただろうか” ということです。

調査対象の患者集団が目的に合っているか

18~65 歳の成人を対象に実施される試験から得られる情報は、非常に高齢の患者には限定的にしか適用できません。また、乳幼児の治療の指針としては不十分であることはほぼ明らかです。同様に、重篤または非常に進行した疾患を持つ患者は、より軽度または初期段階の疾患を持つ患者とまったく異なる反応をすることがあります。

エンドポイントにどの程度の妥当性があるか

他の疾患や症状よりも治験による研究に役立つ疾患や症状があります。新しい抗がん剤によって生存期間中央値が 1 年延びるなら、その評価に意義があることはほぼ疑う余地がありません。同じ患者の治療に新しい痛み止めが使用される場合は “痛みの基本単位” が明確には存在しないために評価がはるかに難しくなります。この場合も、そのアプローチが状況にふさわしいかどうかを検討するしかありません。

医薬品の効果に臨床的価値があったか

通常は、医薬品の効果が大きければ大きいほど優れた医薬品になります。すべての医薬品には経費と副作用という代償が伴います。それらの代償に報いる最も大きなベネフィットを見出す必要があります。ただし、結果が全体的に穏当な場合、その結果は劇的な改善を見せる一部の患者と何の変化もない患者で構成されている可能性があることは覚えておく価値があります。研究を進めることで特に効果のあるサブグループを特定できれば、その新薬はその標的集団によって大いに有用なものになる可能性があります。

治験結果が過去の知識パターンにどのように適用されるか

1 つの治験が特定の医学分野で入手可能な唯一の情報として単独で存在し得ることはきわめてまれです。そのような状況は、通常、まったく新しい治療方法が初めて導入されるということです。興味を持って結果を注視し、その後の試験によって支持されるかどうかを待つしかありません。ほとんどの場合は、同じ疾患または関連した疾患で、同じ医薬品または同種の医薬品を用いて実施された過去の試験が存在します。そして、その新しい治験結果は、過去の知識体系に照らして検討されます。一般に、既知の情報との整合性が高い調査結果は、過去の結果と完全に矛盾する調査結果よりも受け入れられやすくなります。ただし、先入観を持たないことが重要です。

添付文書

A2-4.34.3-v1.2