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医薬品販売承認申請

はじめに

医薬品開発プロセスは長い道のりです。開発プロセスの最終目標は、新しい医薬品の販売を認められること、つまり医薬品販売承認 (MA) です。製薬会社の規制関連業務 (RA) 部門は、医薬品のライフサイクル全体においてすべての手順に不可欠な部分です (あるいはそうであるべきです)。規制関連業務は特に、すべての治験前に提出することを義務付けられている申請、医薬品販売承認申請 (MAA) の書類の準備と提出、および MA が承認された後のその他の活動 (販売承認の変更の申請など) の責任を負います。規制関連業務の専門家は、適用されるすべての薬品規制と開発プロセス全体を完全に把握している必要があります。

医薬品販売承認 (MA) の提出

製薬会社は、開発の早い段階で、医薬品販売承認のためにどのタイプの申請を提出するかを決定しなければなりません。申請には以下のようなタイプがあります。

  • 全申請 – 下記のコモン テクニカル ドキュメント (CTD) の三角形を参照してください。
  • 簡略申請。
  • 文献申請 – 既存の科学文献に基づきます。

申請には、関係当局への書類一式の提出が必要です。図 1 は、新しい革新的な医薬品の開発プロセスを示しています。この種の医薬品では完全な書類一式の提出が求められることになり、そこには当該医薬品のための文書の全要素が含まれなければなりません。

書類に含まれる要素について

図 2 は、カナダ、欧州、日本、スイス、米国などで医薬品販売承認申請 (MAA) として規制当局に提出される書類であるコモン テクニカル ドキュメント (CTD) の構成要素を示しています。CTD のフォーマットは、医薬品規制調和国際会議 (ICH) によって作成されたものです。CTD は、手続き (中央審査方式 (CP)、相互認証手続き (MRP)、分散審査方式 (DCP)、加盟国別審査 (NP)) や申請の種類 (独立系、ジェネリックなど) に関係なく、EU 内のすべての種類の MAA に使用されます。CTD フォーマットはあらゆる種類の製品 (新規化学物質、放射性医薬品、ワクチン、ハーブなど) に適用できます。

CTD には 5 つのモジュールがあります。

  • モジュール 1: 各地域の行政情報。
  • モジュール 2: 要約と概要。
  • モジュール 3: 品質。
  • モジュール 4: 非臨床試験報告書。
  • モジュール 5: 臨床試験報告書です。

CTD のモジュール 2 から 5 はすべての地域に共通ですが、モジュール 1 は各地域に固有のもので、CTD の一部とは見なされません。医薬品の品質、安全性、および有効性に関する文書の大部分は、モジュール 3 から 5 にあります。規制関連業務の専門家は、提出される文書がすべての関連規則、指令、およびガイドラインと一致していることを確認します。また、モジュール 2 に含まれる要約も提出します。

図 2: コモン テクニカル ドキュメントの三角形

モジュール 1: 各地域の行政情報

CTD のモジュール 1 には、地域レベルで必要なすべての管理情報が含まれています。EU には独自のモジュール 1 があり、以下の 10 要素で構成されています。

1.0 カバー レター

1.1 総目次

1.2 申請フォーム

1.3 製品情報

これは医療従事者と患者の両方によって使用される情報で、製品概要 (SmPC) – 医療従事者向け詳細文書、ラベリング、および添付文書 (PL) が含まれます。PL が一般の人々に理解可能であることを実証するために、読みやすさテストを実施する必要があります。各国の所轄官庁と EMA は、フォーマットと内容を詳細に規定した製品情報を表示するため、テンプレートをすべての EU の言語で公開しています。

1.4 専門家に関する情報

CTD のモジュール 2 には、専門家によって書かれた要約と概要が含まれています。これらの専門家はそれぞれ履歴書 (CV) を提出し、要約を作成する際に適用される規制または指令の規則に従ったという宣言に署名する必要があります。

1.5 異なる種類の申請に固有の要件

文献申請、ジェネリック医薬品、"ハイブリッド医薬品"、バイオシミラーの申請、(拡張) データ/市場優先権、例外的な条件下での申請、条件付き医薬品販売承認の申請など、特殊な申請に必要な追加情報。

1.6 環境リスク評価

医薬品に含まれるすべての有効成分には環境に対する潜在的なリスクがあり、有効成分またはその代謝産物は最終的にはすべて環境に取り込まれます。企業は、医薬品の使用、保管、廃棄によって生じる可能性のある環境への影響に対処する必要があります。

1.7 オーファン医薬品の市場優先権に関する情報

その医薬品が希少疾患の治療を目的としたオーファン医薬品として指定されている場合は、特別な情報が必要です。市場に存在する他の医薬品が同じ適応症に対してすでに市場優先権を持っている場合、新薬は特別な条件下でのみ承認される場合があります。

1.8 医薬品安全性監視に関する情報

医薬品安全性監視とリスク管理システムの説明を含める必要があります。申請者は、有害反応と潜在的リスクの適切な調査が実施されていることを証明しなければなりません。これには、申請者が医薬品安全性監視の責任を負う有資格者であることの証明と、EU または第三国で発生したあらゆる有害反応の通知に必要な手段が含まれている必要があります (指令 2001/83/EC の 8 条 (n))。

1.9 治験に関する情報

申請者は、EU 域外で実施された医薬品の治験が EU の要件を満たしたという声明を含める必要があります。

1.10 小児に関する情報

EU では、すべての新薬は小児集団に対して検討されなければなりません。一般的には小児での試験が必要になります。しかしながら、その疾患が高齢者や成人にしか見られない場合、または新薬が小児集団の一部または全部において効果がないか安全でない可能性が高い場合には、この要件に対する免除が認められる可能性があります。免除が認められない場合は、企業は小児医薬品開発計画 (PIP) を提出する必要があります。ただし延期が認められた場合は、PIP は後で提出してもかまいません。このセクションには、免除のコピー、または PIP (該当する場合は延期を含む) に関する決定事項のコピーを含める必要があります。

書類のまとめ方

ほとんどの場合、現在は紙による提出は行えません。つまり、5 つの CTD モジュールに含まれるすべての文書は、標準化された電子フォーマットである eCTD で提出する必要があります。eCTD は、単なる PDF 文書の集まりでも、単一の巨大な PDF ファイルでもなく、順守すべきフォルダとファイルの構造を詳細に記述している標準です。これにより通常のコンピューター ディレクトリと同じように、企業と規制当局が関係書類に簡単に目を通せるようになります。

提出プロセスについて

申請者は、提出前にすべての実行上の問題と規制上の問題を慎重に検討する必要があります。これには、行うべき医薬品販売承認の手続き (中央審査方式 (CP)、相互認証手続き (MRP)、分散審査方式 (DCP)、加盟国別審査 (NP)) の選択が含まれます。

CP による申請に関連する多くの質問に対する回答は、EMA のウェブサイトに掲載されています。

提出前会合

企業と規制当局担当者との提出前会合は通常、提出日の 6、7 か月前に行われます。こうした会合を手配することで、企業は申請書類の完成前に追加の情報とガイダンスを求めることができます。

CP に続く MAA では、企業のプロジェクト チームが申請の評価に関与する EMA のチームと話し合います。MRP、DCP、NP では関連する所轄官庁と提出前会合を行うことができ、同様に有用です。

医薬品販売承認申請 (MAA) の提出

CP では、例外が認められていない限り、EMA への提出は eCTD フォーマットで行います。eCTD はオンライン ポータルを通じて提出します。

MRP、DCP、または NP に続く申請の場合、状況はより複雑になります。これらの申請には最大 31 の異なる機関が関与する可能性があります。欧州医薬品規制首脳会議 (HMA) ネットワーク (すべての加盟国間の共同作業) は現在、EMA の Common European Submission Platform (CESP) と同様のソリューションを提供しています。CESP を使用する場合、システムへの書類のアップロードは一度だけで済みます。関与するすべての加盟国は後で CESP リポジトリから提出フォームを引き出すことができます。このプラットフォームでは、当局と申請者間のやりとりも可能です。

検証フェーズ

EMA または所轄官庁が MAA の提出を受けると、提出書類はまず必要な書類がすべて含まれているかどうか検証されます。質問がある場合、申請者には必要な回答とそれを裏付ける文書を提供する機会が与えられます。MAA の検証が終わると、評価が始まります。

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