医薬品の製造。ステップ 9:提出書類

はじめに

患者が新薬を使用できるようになるまでには 12 年以上かかり、すべての研究開発にかかるコストは平均で 10 億ユーロを超えます。

医薬品の開発は、リスクの高い投機的事業です。開発中の大半の物質 (約 98%) は、新薬として市販されることはありません。その理由の多くは、開発中に確認されたベネフィットとリスク (負の副作用) を考慮すると、既に市販されている医薬品とうまく比較できないためです。

新薬の開発は、10 段階のステップに分けることができます。本稿では、「ステップ 9:提出書類および医薬品販売承認申請」について説明します。

ステップ 9:提出書類 (販売承認申請)

第 III 相臨床試験の結果から、許容できるベネフィットとリスクの関係が示された場合は、販売承認申請 (MAA) を準備することができます。すべての情報 (非臨床、臨床、製造) は収集され、あらかじめ定義された書式で整理されます。これは「一件書類」と呼ばれ、規制当局に送信されます。各国の規制当局が定める要件はそれぞれ少しずつ異なるため、規制部門のスタッフが持つ専門知識が非常に重要な役割を果たします。

医薬品規制調和国際会議 (ICH) では、米国、欧州、日本で求められる多数の要件を調和しました。これにより試験の重複が削減され、コモン テクニカル ドキュメント (CTD) をレビューするプロセスが簡素化されています。

申請書類が受理されると、規制当局はその情報について審査を行い、疑問が生じた場合は質問を行います。この質問には、書類を提出した規制担当部門のスタッフが回答します。規制当局が結果 (リスクとベネフィットの評価) について満足のいく内容であると認めた場合は、その新薬を市販する承認が与えられます。審査プロセスには、通常 12~18 か月かかります。この期間は、規制当局が認めた特殊なケースの場合は短縮される場合がありますが、回答すべき質問が多い場合は長くなることもあります。承認を受けるにあたり、さらなる臨床試験を当局から求められる場合があります。規制当局から満足のいく内容であると認められない限り、医薬品を市販する許可は得られません。場合によっては規制当局から承認を受けられず、医薬品の市販が認められないケースもあります。

多くの国では、新薬の費用対効果に関する研究も求められます。これらの文書は、医療技術評価 (HTA) グループを通じて、政府機関または保険会社が国の保険制度による医薬品の処方や支払いの許可を、決定および推奨できるように支援します。

よく知られた HTA 機関の一つに、英国の国立臨床研究所 (NICE) が挙げられます。NICE では、医薬品の処方を許可すべきかどうかについて、政府機関に提案を行っています。

参照文献

  1. Edwards, L., Fox, A., & Stonier, P. (Eds.).(2010).Principles and practice of pharmaceutical medicine (3rd ed.).Oxford:Wiley-Blackwell.

添付文書

A2-1.02.8-v1.1