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医薬品の製造。ステップ 3 および 4:分子またはリードの選択

はじめに

患者が新薬を使用できるようになるまでには 12 年以上かかり、すべての研究開発にかかるコストは平均で 10 億ユーロを超えます。

医薬品の開発は、リスクの高い投機的事業です。開発中の大半の物質 (約 98%) は、新薬として市販されることはありません。その理由の多くは、開発中に確認されたベネフィットとリスク (負の副作用) を考慮すると、既に市販されている医薬品とうまく比較できないためです。

新薬の開発は、10 段階のステップに分けることができます。本稿では、「ステップ 3 および 4:リードの生成と最適化。

ステップ 3:リードの生成

このステップは、標的に相互作用する分子を見つけることから成ります。分子は植物など自然由来の場合もあれば、化学者によって合成される場合もあります。このような分子は「小分子」と呼ばれます。標的と相互作用する分子、「リード」を見つけるために、数十万もの分子がテストされます。リードの試験は、スクリーニング プロセスと呼ばれます。近年ではロボット技術が発達し、「ハイスループット」のスクリーニングが可能になっています。これは、数百万という数の分子でも、迅速に試験を行うことができることを意味します。リードを生成または発見されると、プロセスは次のステップに進むことができます。

標的に相互作用する大型分子 (タンパク質) が見つかる場合もあります。このような大型分子の生成はさらに複雑で、バイオテクノロジー プロセスによって製造されるため、「生物製剤」と表現されています。バイオテクノロジーでは、大型分子は、大型の発酵タンクでバクテリアや酵母菌、動物細胞といった生体の宿主細胞により生産されます。次にタンパク質が分離および精製されます。精製されたタンパク質はその後、標的との相互作用を調べる目的で使用されます。

製薬業界では伝統的に、その後新薬として開発される「小分子」を生産していました。近年では、大型分子 (タンパク質) つまり「生物製剤」も生産しています。小分子と生物製剤のどちらも、医薬品の開発では重要な役割を果たします。

ステップ 4:リードの最適化

リードの最適化では、効果を高めるために分子に変更を加えます。スクリーニング プロセスでは「リード」、つまり標的に相互作用する分子を特定します。しかしながら、このような分子は弱い効果しか生み出さないことが多く、さらに開発を続けるには適切とはいえません。そのため、化学者は元素を追加または削除することで、選定した「リード」分子に変更を加えます。これにより、微妙に異なる分子の範囲が作られることになります。また、既存の医薬品の分子を修正して、効果を改善したり変更したりする場合もあります。このような分子のデザインには、コンピューター技術が役立ちます。

変更を加えた分子には試験を実施し、どの構造が最も高い有効性を示し、最も高い忍容性 (安全性) を示すのかを特定します。このような構造は、科学者が分子の薬理学、つまり分子が体内で作用する仕組みの理解に役立ちます。優れた有効性と安全性を示す分子は、「候補薬」としてさらに試験が進められます。候補化合物の科学的および技術的情報 (分子構造と効果など) は、知的財産権を保護するため、このくらいの段階で登録または特許申請するのが一般的です。

既に説明したように、開発プロセスの各段階では一連の実験結果についてレビューを行い、さらに進めるかどうかの判断が下されます。「続行」の決定が下された場合は、次の実験を進めるための資金が投資されることになります。実験で得られた情報がさらなる活動を後押しするものでなかった場合は「中止」の決定が下され、プロジェクトは中止となります。

概要:ステップ 1~4

候補薬が現れるのは、適切な標的を選択し、最適なリード化合物を特定できた場合だけです。この段階までに医薬品発見プロセスは次のようになります。

  • 平均で 4.5 年の期間
  • 大量の分子に対する試験 (5,000~10,000、小分子の場合はさらに多数) および
  • 平均で 5 億ユーロのコスト

候補化合物は、小分子または生物学的医薬品のいずれかです。

参照文献

  1. Edwards, L., Fox, A., & Stonier, P. (Eds.).(2010).Principles and practice of pharmaceutical medicine (3rd ed.).Oxford:Wiley-Blackwell.

添付文書

A2-1.02.3-V1.1