医薬品の製造。ステップ 10:ライフサイクル管理

はじめに

患者が新薬を使用できるようになるまでには 12 年以上かかり、すべての研究開発にかかるコストは平均で 10 億ユーロを超えます。

医薬品の開発は、リスクの高い投機的事業です。開発中の大半の物質 (約 98%) は、新薬として市販されることはありません。その理由の多くは、開発中に確認されたベネフィットとリスク (負の副作用) を考慮すると、既に市販されている医薬品とうまく比較できないためです。

新薬の開発は、10 段階のステップに分けることができます。本稿では、「ステップ 10:市販および市販後の安全性監視」とライフサイクル管理について説明します。

市販および市販後の安全性監視

市販プロセスは、医師をはじめとする医療従事者の方たちと新薬に関する情報の共有を伴います。そうすることで新薬の効果を認識するようになり、患者がベネフィットを得られると思われる場合には処方することもあります。

しかし、開発プロセスはこれで終わりではありません。医薬品を「実生活」で使用した場合の安全性に関する情報は、引き続き収集して分析する必要があります (「医薬品安全監視 」と呼ばれます)。その理由は次のとおりです。

  • 治験は明確な答えが得られるようにデザインされており、患者は試験対象の疾患だけに罹患していて、他の医薬品を服用していないことが理想とされています。
  • 実生活では、多数の患者が新薬を服用することになります。そのような患者は、他の複数の疾患に罹患していたり、さまざまな医薬品を服用していたりする可能性があります。

医薬品の実際のリスクとベネフィットの関係を完全に理解するには、治験と実生活のどちらのデータも必要です。

ライフサイクル管理

医薬品の市販後も、次の調査を行うために開発プロセスは継続されます。

  • 医薬品の他の用途の可能性 (適応症)。たとえば、当初は喘息患者を対象としていた医薬品が、慢性閉塞性肺疾患など、他の肺疾患に罹患する患者にも適応となる可能性があります。
  • 医薬品の製造方法および使用方法の改善 (新しい処方)。たとえば、小児用の特別な処方が挙げられます。

このような活動はすべて「ライフサイクル管理」として知られています。

医薬品のライフサイクルにおけるその他の変化

初めて市販される医薬品は「特許権」により保護されています。これ他社が同様の医薬品を販売することができないことを意味しています。特許権またはデータ保護の期限が終了すると、他社も同様の製品を製造および販売するようになります。この場合、そのような製品は「ジェネリック」と呼ばれます。

新薬は、処方箋薬 (POM) として認可されるのが一般的です。これは、最初の数年間は医療専門家が新薬の使用を監督できることを意味します。その後、適切性と安全性が確認されると、その医薬品は一般用医薬品 (OTC) として販売できるようになります。この場合は、その医薬品の規制状況の変更を伴い、新たな認可の取得が必要になります。OTC 医薬品は、患者が薬局やスーパーマーケット (国によって異なります) で直接購入できます。

参照文献

  1. Edwards, L., Fox, A., & Stonier, P. (Eds.).(2010).Principles and practice of pharmaceutical medicine (3rd ed.).Oxford:Wiley-Blackwell.

添付文書

A2-1.02.9-v1.1