医療技術評価:重要な定義

健康とは?

“健康” とは、さまざまな人々とさまざまなものを意味しています。”公衆衛生” という考えが過去 10 年間にわたり影響を強めるにつれ、”健康” は単に個人の健康の総体ではなくなりました。

常に受け入れられるわけではないとはいえ、世界保健機関 (WHO) による健康の定義は、その中でも大局的で幅広い定義の 1 つです。WHO による健康とは

健康とは単に、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。1

病気がないこと、つまり否定形による言及により健康を定義していないため、この定義は魅力的です。しかし、忘れてならないのは、すべての医療システムがこの定義に合致しているわけではないということです。

医療システムの意思決定者は一般的に善性および公平という観点から、健康と医療システムのパフォーマンスを測定します。2

  • 善性とは、医療システムが人々の期待によく答えることを意味します。
  • 公平 とは、すべての人に差別なく同じようによく対応することを意味します。

医療システムについて

医療システムは、国ごとに、ときには国内でも地域によって異なります。医療システムは、高品質な医療サービスをそのメンバー (または集団) に提供することを求めています。いくつかの医療システム:

  • 病院サービスの提供のみ
  • コミュニティおよびプライマリ ケアの提供
  • 疾患予防および健康増進に関与

多くの医療システムがこれらのすべてに責任を持っています。

事実上、世界のすべての医療システムでは、政府が重要な役割を果たしています。しかし、さまざまな政府の役割は、すべて同じではありません。たとえばある場合、政府の役割は独立団体により提供されるシステムを管理する法律規則を作成するのみです。別の場合、政府は医療システムに資金を提供し、医療サービスの提供を組織するかもしれません。

医療システムに対する基金の構造は、本質的に異なります。たとえば、税金を通じて資金を調達しているシステムもあれば、保険ベースの制度もあります。個人による自己負担分は、含まれている場合もあれば、含まれていない場合もあります。

一般的に公衆、個人、混合システムと言われていますが、このような描写はシンプルすぎては誤解を招くことがあります。たとえば、公的に資金を提供されたシステム (英国など税金や社会保険によって支払われる) は、実際には非公的機関 (営利または非営利機関、および投資家またはチャリティーによる寄付により資金援助を得たプロバイダーなど)によりサービスが提供されていることもあります。

医療技術について

技術とは、実用的な目的のため知識の一部を適用することと定義することができます。したがって、医療技術は、健康の促進、疾患の予防、診断または治療、リハビリテーション、あるいは長期ケアのために使用されるあらゆる介入と定義することができます。これには、医療に使用される医薬品、医療機器、手技、および組織システムが含まれます。3

したがって、”医療技術” という用語は、医療システムにおける多くの異なる介入に言及するために使用することができます。以下の内容が例になります。

  • 不健康状態を防ぐプログラム (例:子供のワクチン接種プログラム)
  • 手技 (手術など)
  • 医薬品
  • 装置 (治療行為または日常生活の活動の支援を提供する機器または機械、インスリンポンプ、エピネフリン自己注射器など)

医療技術評価 (HTA) について

医療技術評価 (HTA) は、医療技術の使用による短期的および長期的結果を調査する 1 つの政策研究の形態です。医療技術の使用に関連する医療、社会、経済、および倫理的問題についての情報を集約しようとする学際的なプロセスです。体系的、透明、公平、堅固な方法でこれを行うことを目指しています。HTA の目的は、これらの決定に影響する情報を提供することによって意思決定を支援することです。

HTA は世界中の多くの医療システムで使用されており、その使用はますます広がっています。ただし、HTA はさまざまなシステムでさまざまな方法で定義される場合があり、場合によっては広義に、場合によってはより狭義になります。

医療技術評価機関の欧州連合ネットワーク(The European Union Network of Health Technology Assessment organisations (EUnetHTA)) は、次のように医療技術評価を定義しています。

医療技術の使用に関連する医療、社会、経済、および倫理的問題についての情報を体系的、透明、公平、堅固な方法で集約する学際的なプロセスです。その目的は、患者を重視して優れた価値の実現を求める安全で効果的な医療方針に関する情報を伝えることにあります。4

方針の目標にかかわらず、HTA は常に研究および科学の手法にしっかりと根差したものである必要があります。

一般に、HTA は、最も価値があり投資すべき医療技術について、医療システムに意思決定を伝えることを目的としています。この価値の決定は複雑であり、方針と社会の状況を考慮する必要があります。

HTA と規制当局の違いについて

販売のため医薬品を承認し (販売承認の発行) 、その (安全な) 使用をモニターし (医薬品安全性監視)、適切な措置を講じる規制当局が存在するにもかかわらず、なぜ HTA 機関が必要なのか疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、規制機関 および HTA 機関には異なる権限があります。

一般的に、規制当局は、経済的およびその他の考慮事項を除外して、関連する医薬品の品質、安全性、有効性に関する客観的な科学的基準に基づいて承認を決定します。5 ほとんどの場合、販売承認に関する決定の根幹をなす臨床データは、医薬品が厳密にコントロールされた条件下でプラセボまたは比較対象と比較して試験する無作為化対照治験に基づきます。

一方、HTA 団体は、臨床効果、安全性、費用対効果に関するエビデンスに注目し、広く適用される場合には、医療技術の使用に関する社会的、倫理的、および法的側面を検討します。医療技術評価の主な要素は、償還と補償の決定を伝えることです。その場合 HTA は、ベネフィットとリスクの評価ならびに経済的評価を含める必要があります。このような評価は、患者が効果的な治療とケアを利用できるようにすべき一方で、財源が制限されており、適切に配分さなければならないため必要とされています。

これらの決定は、公共的価値と医療システムを受ける患者の観点から行なうべきです。

[glossary_exclude]追加資料

    1. International Network of Agencies for Health Technology Assessment (INAHTA):http://www.inahta.org/
    2. European Network for Health Technology Assessment (EUnetHTA):http://www.eunethta.eu/
    3. Health Equality Europe (2008). Understanding Health Technology Assessment. Retrieved 4 July, from https://htai.org/wp-content/uploads/2018/02/PCISG-Resource-HEE_ENGLISH_PatientGuidetoHTA_Jun14.pdf[/glossary_exclude]

添付文書

[glossary_exclude]参照文献

  1. World Health Organisation (2016). ‘Constitution of WHO: principles’. Retrieved 4 July 2021, from https://www.who.int/governance/eb/who_constitution_en.pdf
  2. World Health Organisation (2000). The World Health Report 2000. Health Systems: Improving Performance. Geneva: World Health Organisation. Retrieved 11 February, 2016, from https://www.who.int/whr/2000/en/whr00_en.pdf
  3. INAHTA (2016). ‘What is Health Technology Assessment (HTA)?’ Retrieved 11 February, 2016, from http://www.inahta.org/
  4. ‘What is Health Technology Assessment (HTA)?’ Common Questions. Retrieved 8 August, 2021, from https://www.eunethta.eu/about-eunethta/
  5. European Commission (2004). ‘Regulation (EC) No 726/2004 of the European Parliament and of the Council of 31 March 2004 laying down Community procedures for the authorisation and supervision of medicinal products for human and veterinary use and establishing a European Medicines Agency.’ Retrieved 11 February, 2016, from http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex%3A32004R0726[/glossary_exclude]

A2-6.01.1-v1.1