動物モデル

はじめに

医薬品開発プロセスにおけるあらゆるタイプの医薬品と治験で、妥当な非臨床モデルと動物種の使用がヒトに対する予測データ入手の基本となります。ほとんどの新薬では、これは科学を中心とした戦略を利用して実現されています。生体由来の医薬品を試験する場合は、このことは特に当てはまります。したがって、最も予測に役立つ検査システムと最も予測に役立つ動物種の選択に多くの労力が注がれます。

動物モデルの選択

動物種の選択は、当該動物種とヒトとの以下の点における類似点に基づいて行われます。

  • 薬力学 (安全性薬理学)
  • 薬物動態
  • 生理学および病態生理学

動物種の薬力学 (生体に対する医薬品の作用) はヒトと同等でなければなりません。標的、構造的相同性 (祖先の共通性)、分布、細胞伝達経路、医薬品の効果がすべて検討される必要があります。

治験の初期段階で初回用量を算出してその後の試験での治療量を予測するために、非臨床試験によって候補化合物の薬動学 (生体に対する医薬品の作用) に関する情報が収集されます。計算は毒性試験の結果を基に行わなければなりません。生物学的医薬品の場合は、医薬品に対する生体の反応に基づいて算出されるのが一般的です。

動物モデルの選択では、対象の動物種の生理学と病態生理学をヒトの生理学と病態生理学と比較して評価することが重要です。歴史的には、患者における有効性と安全性を予測するために健康な動物が使用されてきました。しかし、患者は、病気があることによって異なった生理を有します。したがって、現在では、対象となる疾患を持つ動物モデルが非臨床試験において使用されることが多くなっています。小児、高齢者、妊婦などの特殊な群にデータを外挿する場合は特別な配慮が必要です。

動物種の選択では、入手の容易さや標準的な研究室の環境や手続きでの扱いやすさなどの実施可能性も考慮されます。動物の種を選択する前にスクリーニング検査がしばしば適用されます。

動物モデルの例は以下のとおりです。

  • ラット (骨粗鬆症、炎症性疾患、糖尿病、肥満、心血管機能障害、神経変性疾患、癌)
  • サル (骨粗鬆症、炎症性疾患)
  • ブタ (高血圧などの心血管機能障害)
  • マウス (癌、一部の遺伝病)

具体的な動物モデルの例

一般的な毒性試験 (反復投与毒性試験) ではラットとイヌが通常の動物モデルです。ただし、薬力学的、薬物動態学的および病態生理学的な相違、あるいはそのいずれかの相違によってそれらが適当でない場合はその限りではありません。

生殖毒物学試験では一般的にラットが選択され、受胎能力、胚胎児の発達、分娩前後の毒性への影響が評価されます。胚胎児に対する毒性の可能性を評価する試験には 2 つ目の種として非齧歯目種のウサギが多く選択されます。これらが不適当な場合、そしてバイオテクノロジー製品の多くの場合に、これらの生殖毒性試験に人間以外の霊長類が検討されることがあります。

長期的な発癌性試験では、一般にラット、マウス、またはハムスターが使用されます。さらなる発癌性の評価には短期試験デザインの中で遺伝子移入マウスが使用されます。

その他の非臨床試験タイプでは、中毒性 (齧歯動物、霊長類)、ワクチン (フェレット)、免疫毒性 (マウス)、過敏症 (モルモット)、経皮および局所毒性 (ブタ) などを使用して特定の安全面に対応させます。

最も一般的なモデルを適用できない試験もあります。その場合は、ラットの代わりにハムスター、アレチネズミ、モルモットを一般に使用します。イヌの代わりにミニブタまたは超小型ブタやサルを使用することもあります。

場合によって、特に生体に由来する医薬品では、「妥当性のある」予測に役立つ動物種を確立することができません。そのような場合はそれ以外のアプローチが推奨されます。それらの代替アプローチとしては、ヒトの標的を示した適切な遺伝子移入動物の使用や、同じ構造的特徴と遺伝子パターンを持つタンパク質 (相同タンパク質) の使用などがあります。

添付文書

A2-2.02.2-V1.1