個別化医療の課題

個別化医療は標的医薬品の開発を必要とします。

個別化医療が前進するには、分子研究の新たな知見や新たなテクノロジー (「オミクス」テクノロジーなど) を医薬品の開発や治療の承認において使用するために変換 (適合) しなければなりません。

しかしながら、標的医薬品を開発する利点は、臨床試験の効率が高まることです。疾患の既知の原因を標的とすれば開発過程の各段階で失敗する新薬は少なくなり、バイオマーカーの使用が個別化医療の中心になります。バイオマーカーが治療結果に関して一意で予測的であると検証することは、このように開発される医薬品の認可前に、実施されている必要があります。

コンパニオン診断

新しい医薬品は付随する診断検査と合わせて認可されることがよくありますが、これは治療中の患者に対して医薬品が適切なものであることを確認するためです。診断検査が適切に検証されないと、医薬品には効能も副作用もないことがあります。したがって、診断検査の適切な設計と検証は医薬品から最高の結果を得るため、さらに患者のために必要不可欠になります。

コンパニオン診断は投薬前に患者を選抜する必要な検査です。それらは:

  • 医薬品に反応しやすい人を確認する (「反応者」と「非反応者」)
  • 副作用に対してリスクの高い患者を特定する
  • 医師が安全かつ効果的な適用量を選択できるようにする。

コンパニオン診断では、心電図記録法 (ECG) または MRI のような画像診断などの検査を患者に直接実施する場合があります。患者から採取したサンプルで実施される検査 (DNA 検査など) は一般的に規制当局により、最も有効な証拠を提供するとみなされています。

コンパニオン診断には、「使用目的」または「使用上の指示」があります。それらは両方とも、(治療の) 「使用目的」という包括的用語の下で言及されることがよくあります。それらは一般的に以下の要素を含みます。

  • 検査が実施される標的集団 (特定の遺伝子型 (遺伝子構造) または表現型 (特徴) を有する個人)。
  • 測定が実施されている理由、すなわち「臨床の目的」(診断に役立つように、疾患がどのように発現するか (予後) を評価し、モニタリングするなど)
  • 何が測定され、特定され、検出されるのか (特定の遺伝子またはタンパク質)
  • 検証では、定性的かどうか (観察と記載を確認する)、または半定量的および定量的かどうか (数値を確認) も含め、どのような測定が実施されるのか
  • サンプルタイプとその採取部位 (全血や脳脊髄液など)
  • 診断機器の使用を意図した設定 (実験室または「診療現場」) および検証実施にあたって必要とされる装備のタイプ
  • 標的の状態 (特定の疾患、疾患の段階、健康の状態、または他の特定可能な状態や事象)

課題

遺伝子データおよびゲノムデータを扱う研究者にとって特有の倫理的な課題があります。プライバシーを考慮して、データを非公開にすることや、治験の参加者が何に同意しているのかを理解できるようにすること (インフォームドコンセント) が重要です。

患者の特定の部分集団を標的とする医薬品に関してでさえ、「同じ疾患」を有する患者で異なるサブグループに属する患者がその医薬品を処方されることは依然として起こりえます。これにより、次のような結果がもたらされる場合があります。

  • 治療に対する反応が欠けること
  • 患者に対するより良い治療が遅れること
  • 医薬品それ自体が無駄になること
  • 避けることのできた副作用が生じること。

患者の経験

個別化医療では、個々の人の健康についてはるかに多くの情報を提供することが可能となり、そのことが個人的な意味合いを持ち、潜在的に生き方が変わる可能性があります。患者はその準備ができているでしょうか。医療従事者はそのことについて患者とコミュニケーションを取るスキルがあり、その準備もできているでしょうか。

個別化医療では、疾患のある患者は治療に先立ち、次のように安心できる情報を持たなければなりません。

  • 医薬品が自分に効く可能性があること、および
  • 特定の治療で副作用に苦しむ可能性が低いこと。

副作用が避けられない場合、副作用に関して、さらに副作用の重症度に関してよりよくわかっていることで、患者が治療を決定し、その計画を立て、日常生活に合わせることがより簡単になるはずです。

患者と医師のコミュニケーション

一般的には、個別化医療では、患者や医師が理解し議論できる、利用可能な治療オプションについてより多くの、あるいは様々な情報が存在する可能性があります。このことを難しいと思う患者は医師からの適切なサポートが必要になります。

個別化医療を可能にするには、従来よりも多くの検査を実施する必要があるかもしれません。血液検査が定番であると一般的にみなされていますが、生体検査 (組織の一部を切り取る) では麻酔が必要とされ、分析により長く時間がかかることがあります。患者と医師は検査に関して決定を下す際に、その長所と短所を議論する必要があります。

ある検査で、医薬品に患者が反応する可能性はどれくらいなのか予測する場合、その結果は、「確率」 (3 回に 1 回など) またはパーセント表示 (33 %) で表現されるでしょう。人によってリスクの受け止め方が違うため、医師はリスクの解釈の手助けをする必要があります。

 追加資料

添付文書

A2-1.08.4-V1.4